あさしお事件・依然見えない事故状況

2006.11.22



 海保が撮影した写真を見ると、パナマ船籍のケミカルタンカー「スプリングオースター」と接触した「あさしお」の縦舵は、10度以上右に傾いているように見えます。先端部分も右に引きちぎられるような形で曲がっており、衝突した際に、左から右方向への強い力が加わったことを暗示しています。最初、私は二隻がほとんど同じ方向に動いていた場合を推測しましたが、両船は交差するような形で衝突したと考えてよいと思われます。

 朝日新聞によると、スプリングオースターの船底には長さ約9mのこすり傷のほか、20〜30cmのへこみが2カ所にあり、その中に穴があったとのこと。この傷の位置関係が知りたいところです。縦舵だけで、こうした傷ができるには、どのような形で衝突したのかが気になります。スクリュー音に気がついて潜行してから衝突したのではなく、衝突に気がついてから潜行した可能性も十分にありそうです。すべてはスプリングオースターの傷跡に手がかりがあります。

 それから、産経新聞があさしおの排水量を2500tと紹介しているのは誤りです。この船はスターリング・エンジンを搭載する試験艦でもあり、同型艦よりもサイズも排水量も大きいのです。スターリング・エンジンは次期潜水艦に搭載されると見込まれる熱変換型エンジンで、今回の事故がこの開発の進展を止める可能性が懸念されます。

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