中国潜水艦接近事件・産経新聞の誤り

2006.11.20



 産経新聞が中国潜水艦が米空母に接近した事件を報じましたが、その内容の一部が意味不明です。まず、問題の元となった記事は次のとおりです。

沖縄近海を航行中の米空母「キティホーク」が中国海軍の潜水艦に追跡された問題で、中国訪問中のラフェッド米太平洋艦隊司令官は17日、中国軍当局者から潜水艦の活動は公海上であり、領海侵犯などには当たらないとの説明を受けたことを明らかにした。

 公海上か否かの問題について、同じ記事で次のような指摘がなされています。

同紙の伝えた洋上での事態は、中国のソン(宋)級潜水艦が航行中の米空母を約8キロの魚雷射程圏内まで追跡するという挑発行動に出たというもので、公海上かどうかは問題となっていなかった。

 さらに記事の終わりには、こういう記述もあります。

中国海軍の潜水艦では、2004年にハン(漢)級原子力潜水艦が石垣島周辺の日本領海を侵犯し、日中間の外交問題となっていた。中国軍当局者は、この領海侵犯事件を念頭に活動海域の合法性を強調した可能性もあるようだ。

 中国外務省の説明は、どの国の海軍も公海上では安全措置を図った上で演習を行えるという国際法上の原則を根拠にしたものであり、報道に対する反論ではありません。どの国も、この原則を活用して洋上演習を行っています。米政府も、それを理解しているので中国政府に対して公式の抗議は行っていません。そのかわりに、報道機関にリークして、中国を軽く牽制しているのです。産経新聞の報道は、そうした状況をまったく無視し、微妙な状況を正確に報じていません。

 しかし、正しい指摘もあります。中国外務省の報道官が、ワシントン・タイムズの報道が不正確だと指摘した件について、報道のどの部分についてかを指摘したのは当然です。これについて、突っ込んだ取材をして報道してもらいたいものです。

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