イラク少女強姦殺人で技術兵が有罪を認める

2006.11.16



 armytimesによると、少女を強姦してその家族と共に殺害した事件で、ジェームズ・バーカー技術兵(James Baker)が軍事法廷で有罪を認めました。これは、先にスティーブン・D・グリーン元上等兵が主導した強姦殺人事件で、グリーンは人格障害で軍を除隊になった後で逮捕されたため、連邦裁判所で裁判が進んでおり、他の4名が軍事裁判にかけられています。

 この事件の被告は、バーカー技術兵のほか、ポール・コルテス軍曹(Paul Cortez)、ジェシー・スピルマン上等兵(Jesse Spielman)、ブライアン・ハワード上等兵(Bryan Howard)、合計4名で、被告らは4人とも第101空挺師団第2旅団に所属しています。

 バーカー技術兵は裁判官のリチャード・アンダーソン中佐が「なぜ襲撃に参加したのか」と問うと、「私はイラク人を憎んでいます、裁判長殿。奴らは微笑んだかと思うと、何も考えずに顔に銃弾を撃ち込むのです」と答えました。しかし、バーカーによれば、襲撃の話が出たのは、彼らが配置された検問所で酒を飲み、トランプで遊んでいた時だったと言います。米兵は検問中に酒を飲んでいるらしいのです。これでは誤射事件が起きるわけです。それも、空挺部隊の精鋭の話ですから、他の部隊はもっと悪い状況にあるのでしょう。グリーンが犯行を他のメンバーに持ちかけ、バーカーは「お前、頭が変だぞ」とグリーンに言い、誰も賛成しなかったものの、言外の合意が成立し、事件が起きたのです。グリーンとコルテスが少女を強姦し、グリーンは彼女と家族を殺害しました。

 バーカーが言う、「笑いながら銃を撃つイラク人」は漫画的なビジョンに過ぎません。彼がこういうイラク人を多数目撃した事実はないはずです。一般の民間人と武装勢力を区別できないことの不安が、こういう認識を生むのでしょう。この発言を無視すべきではありません。敵地に軍を派遣すれば、こうした状況が必ず生まれると考えなければならないのです。

 有罪になれば、コルテス軍曹とスピルマン上等兵の2名が死刑に処せられる可能性があります。スピルマン上等兵が事件に果たした役割が明確ではないので、なぜ彼に死刑の可能性があるかは分かりません。しかし、強姦を行ったコルテス軍曹が死刑に問われるのは当然です。米軍の統一軍規法典の第120条の規定では、妻以外の女性と合意なしに性交渉を持った者は、死刑又は法廷が定めた刑罰を科すと定めています。さらに、合意の上の性交であっても、相手が16歳に達しない女性であった場合、法廷が定めた罰を科すことになっています。ここで、笑い話のような話になるのですが、被害者の女性の年齢がよく分からないのです。FBIは25歳と言い、被害者の隣人は14歳、ワシントン・ポストは15歳としています。イスラム圏では年齢に無頓着なこともあり、被害者が何歳とみなされるかは困難でしょう。いずれにしても、それによってコルテスの罪の重さは変わるのです。

 この種の裁判では、より罪が軽い者が有罪を認めて、事件の詳細を証言するかわりに、減刑してもらうという手順が踏まれます。その証言は、事件の中心的人物を確実に有罪にするために使われるのです。ちなみに、グリーンは連邦裁判所で無罪を主張しています。

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