米空母に中国潜水艦が接近

2006.11.15



 読売新聞が、米空母キティホークに中国海軍の「宋」級潜水艦が8kmまで接近し、キティホークはそれを探知できなかった、と報じました。短い記事ですが、気になる記述がありました。

 ウィリアム・ファロン米太平洋軍司令官が、対潜水艦攻撃の訓練中だったら「極めて予測不可能な事態にエスカレートした可能性もあった」と述べたという部分です。これは誤って中国潜水艦を攻撃することを指しているのだと考えられますが、その可能性はまずありません。訓練では実弾を使うわけではありませんし、ソナーが自軍以外の潜水艦がいることを探知してくれるからです。ファロン司令官がどういう意味で、このような発言をしたのかを知りたいところです。記事に引用されているワシントン・タイムスの記事には、この発言は載っていませんでした。

 また、同じワシントン・タイムスの記事によると、当時、キティホークは対潜水艦演習を行っていなかったために、米潜水艦による哨戒活動は行っていなかったので、海中の監視能力は高い状態ではなかったようです。米海軍は、接近されたことだけでなく、深海海域で起きた事件であることを重視しています。通常、中国潜水艦は深度が深いところでは活動しないため、米海軍関係者は驚いています。さらに、太平洋艦隊指揮官ゲーリー・ラフェッド海軍大将が軍関係者と協議を行うために中国を訪問している最中に合わせて実行されたのかが問題視されていますが、まだその結論は出ていません。私は、それは中国らしくないやり方だと思います。この事件で、対潜水艦戦術の見直しが行われるだろうと、米海軍関係者は述べています。

 確かに、8kmという距離は海上戦闘の物差しとしては極めて近距離であり、事態は容易ならないことのように見えますが、実戦で艦隊に接近するのは、また別の話でしょう。というのは、8kmまで近寄ると、間違いなく自分も攻撃を受けるので、普通はもっと遠くから攻撃するものだからです。だから、この行動に軍事的な意図はなかった可能性もあります。私は浮上したのが意図的なものか偶発的なものかが気になります。モーターを止めて浮上でもしない限り、このような状況は作り出せないでしょうし、そうしても探知される可能性が否定できません。最初に発見したのが哨戒機だったのも気になります。8kmの位置に潜水艦が浮上したのなら、空母の水上レーダーでも探知できたはずです。誰も気がつかなかったのがなぜなのかを知りたいと思います。

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