イスラエルに核兵器使用疑惑が浮上

2006.10.31
同日19時修正


 今年、イスラエルがレバノンを空爆した際、核兵器を使用した疑惑が持ち上がっています。日本では読売新聞などが報じました。(下記)



ウラン原料の新爆弾、レバノン空爆でイスラエル使用か

 【ロンドン=森千春】28日付の英紙インデペンデントは、イスラエル軍が今年夏に行ったレバノン空爆で、ウランを原料とする新型爆弾を使用した可能性があると報じた。

 同紙によると、欧州議会の環境保護派の主導で設置された「欧州放射線リスク委員会(ECRR)」が、レバノン南部ヒアムなど2か所の爆撃現場から採取した土壌を調べたところ、放射能が検知され、ウランが含まれていたのが確認された。組成分析の結果、濃縮ウランと見られる。

 同委員会関係者の初期報告は、劣化ウランの代わりに濃縮ウランを使った地中貫通型爆弾などの可能性を指摘している。

(2006年10月29日0時9分 読売新聞)



 これについて調べたところ、この事件を報じたインデペンデント紙がさらに続報を報じていることに気がつきました。

 イスラエルの核兵器らしき武器について、欧州放射線リスク委員会だけでなく国連が調査を開始しました。2週間の予定で、20人の国連の専門家がレバノンの環境保護活動家と共にサンプルを採取しています。結論は12月に報告される予定です。

 この件について、イスラエルは核兵器の使用だけでなく、劣化ウラン弾や濃縮ウランを使った兵器についても強く使用を否定しています。レバノンでの戦いに先だって、アメリカがバンカー・バスター「GBU-82」100発をイスラエルに輸出しています。これはイランの地下核施設を破壊するためと見られていますが、レバノンで使用された可能性はあります。しかし、バンカー・バスターにウランなどは使われていないはずです。貫徹用に弾頭の硬度を高めるのなら、劣化ウラン十分であり、高価な濃縮ウランを使うはずはありません。そこにこの事件の謎があります。

 記事にはヨーロッパの科学者たちも当惑しているという記述があります。クランフィールド大学の軍事科学政策学、クリス・ベラミー教授は、最初の試験結果をドイツが作った有名な暗号機エニグマにたとえ「まったくの謎だ」と表現し、ダーティ・ボムとの推測は否定しました。(Chris Bellamy, a professor of military science and doctrine at Cranfield University, said the initial tests "present an enigma". ) ちなみに「enigma」は、英語で訳の分からない物を指す言葉としてしばしば使われます。

 話は変わりますが、先端と尾部だけが金属で、他の部分がカーボン・ファイバーとエキポシ・マトリックスの複合剤という高密度不活性金属爆弾(Dense Inert Metal Explosive : DIME)がレバノン戦争で使われたことは分かっています。これは爆心地付近の圧力を高め、遠方の圧力を弱めて、コラテラル・ダメージを最小限に抑えた新型の爆弾で、そのために爆薬部分にはタングステンの小片が充填されています。この爆弾で足が切断された場合、傷口に破片が見当たらず、高熱を帯びた痕があると、ガザ地区の医師が報告しています。よくも次々と新兵器が出てくるものだと思いますね。

 とにかく、早くこのエニグマが解明されて欲しいところです。皆さんはこの事件をどのように考えますか?

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