狙撃映像で米議員がCNNを批判

2006.10.25


 最近、イラクで武装勢力に狙撃される米兵の姿が放送されました。武装勢力が撮影した映像をCNNが武装勢力の指導者から入手したものです。このビデオテープは全米ネットワークを通じて放送され、私もそのいくつかを見ました。

 military.comによると、この映像に対して、共和党のダンカン・ハンター下院議員(ベトナム戦争従軍経験者、第173空挺旅団と第75陸軍レンジャー部隊での勤務経験あり)が異議を唱えました。こうした映像は武装勢力を利するというのが彼の意見です。「過去の戦争では、メディアはもっとアメリカ寄りでした。あなたは戦争の両側に立つことはできないのです。CNNは米兵殺害を呼び物にしたプロパガンダ映像で敵の広報係として仕えました」とハンター議員は抗議し、ラムズフェルド国防長官に、従軍記者制度(the military embedding program)からCNNを外すように進言しました。もちろん、CNNはハンター議員の発言に反発しています。

 ハンター議員はブッシュ政権と運命を共にしたいようです。CNNがこの映像を報じたのは当然で、批判されるべき筋合いのものではありません。映像は弾丸が命中する瞬間はカットし、事前に不愉快な映像が含まれていることを告知した上で放送されました。最近の従軍記者は、ベトナム戦争の頃に比べると行動がより制限されており、これ以上制限すれば、戦争報道そのものができなくなってしまいます。特に、イラク侵攻以降、戦争報道は米軍の制限と武装勢力側の攻撃が強まったことの両方で困難になり、戦争の実態がつかみにくい状態が続いていました。それをさらに愛国心で制限を加えようという判断は言うまでもなく誤っています。軍事分析の立場から言えば、どんな映像も考察の役に立ちます。それを見るチャンスを減らすべきではありません。

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