襲撃型テロの急増によるイラク治安悪化

2006.10.24


 最近のアメリカのニュースを見ていると、ブッシュ政権の評判は最悪です。これで選挙に勝てなければ、民主党は商売替えを考えた方がよいというジョークまで飛び出す始末です。ブッシュ大統領が、現在の状況をテト攻勢にたとえたことは、意外だと受け取られており、やはりテト攻勢と現在のイラクの治安状況は、先日私が指摘したのと同じ理由から、まったく異なっているという指摘が出ています。ブッシュ大統領に対するマスコミの評価は最悪の状況で、テレビ・インタビューで「最近、どんな本を読みましたか?」「読んだ本から何を学びましたか?」と、ブッシュ大統領の知性を頭から疑う質問まで出ています。ブッシュ大統領が「私は本は滅多に読まない」と豪語したことがあるためでしょう。ブッシュ政権についての本を何冊も出しているボブ・ウッドワードの本は一冊も読んでいないと、ブッシュは言いました。自分が政権にいる間に読むつもりはないのだそうです。もう、軍事的な観点でブッシュ大統領を評価したいという人はおらず、資質そのものが疑われているといった状況です。

 驚いたことに、アリゾナ・カーディナルズに所属していたNFLプレイヤー、パット・ティルマンの兄弟ケビン・ティルマンまでが政府を批判するようになりました。パットは同時多発テロ以後、米陸軍に兄弟と共に志願し、アフガニスタンにレンジャー隊員として派遣され、味方に背後から誤って撃たれて死亡しました。同じレンジャー部隊にいたケビンは、military.comによると、ケビンは雑誌に掲載された記事の中で「どういうわけか、軍人がより多く死ぬほど不法な侵略が合法化される。なぜだか、アメリカのリーダーシップの名声だけが国民の前に横たわっていて、不法な侵略を行う国家は地上軍の兵士の勇気と美徳、名誉を盗みとることを許されてきた」と述べています。口先だけではなく、愛国心を行動で示してきた人たちがブッシュ政権を批判するようになったのです。

 10月の戦死者のリスト(globalsecurity.orgによる)を見ていて、小火器による死因が以前より多いような気がしました。治安が一層悪化したのは9月末からなので、その前月の8月と比較してグラフ化したところ、明らかに変化が見られました。8月の戦死者は70人、10月は87人です。この数字は死亡日に基づいているため、10月よりも前に負傷し、10月中に死亡した数も若干含まれています。なお、戦死者が出た場所はバグダッドとシリア国境のアル・アンバル州の二つが飛び抜けています。

 死因の分類には少し説明が必要です。「敵対行動(種別不明)」は、武装勢力の攻撃が原因で死んだのは間違いがないのですが、原因が特定されていないものです。これらには、小火器、手榴弾、IEDなどすべてが含まれると考えられます。「非敵対的な原因」は、戦闘とはまったく関係がない事故、病気、自殺などが含まれます。

 グラフからすぐに読み取れるのは、「非敵対的な原因」が減り、「小火器」が2倍に増えていることです。その他の数値はほとんど変化が見られないのに、小火器による攻撃が増えているということは、武装勢力が以前のように隠れてばかりいないで、攻撃に出てきていることを意味します。一時、小火器による攻撃が激減した時期がありましたが、その状況が変化しているのです。我々は、これまで米軍が武装勢力を逮捕し、彼らの武器庫を見つけ、武器を取りあげるニュースを見てきました。それが、今になって襲撃が増えたというのです。これでも、チェイニーとラムズフェルドは失敗を認めないでしょう。

 戦争の定石をわきまえない軍事行動は失敗すること。軍事に明るい者を政府内に置き、戦争を避ける方向で戦略を考えさせること。これらはイラク戦の教訓として忘れてはなりません。中間選挙のあとでイラク戦略の見直しが行われ、この愚行も幕引きの準備がはじまります。しかし、私たちはこの戦争を起こしたアメリカ人の顔を、アメリカの尻馬に乗った日本の政治家たちの顔を忘れるべきではありません。誰がどのタイミングでどんなことを言っていたか、メモを作っておくと、選挙の投票のよき判断材料となるでしょう。

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