イラク南部アマラをマハディ軍が占拠

2006.10.21

 military.comに掲載されたAP通信の記事によると、去る木曜日の夜、南部イラクのアマラ(Amarah)がシーア派のマハディ軍により占拠されました。アマラは2ヶ月前にイギリス軍が撤退した後、繰り返し攻撃を受けるようになっていました。マハディ軍は警察署を襲撃して占拠すると道路を封鎖し、武器を持って町を巡回しました。彼らの人数は目撃者によると800人程度でした。イラク軍は2個中隊600人を派遣し、彼らと調停役が到着すると武装勢力は町を去りましたが、この事件で警察官やマハディ軍など25人が死亡したとのことです(死者は少なくとも30人との情報もあります)。

 同時期にはバグダッドや北部の町でも武装勢力の活動が活発に行われています。もはや、全土が内乱状態と言うべき段階に来ています。そんな時、ワシントン・ポストに、ラムズフェルド国防長官のインタビュー記事が載りました。彼は、最近のイラクの治安状態の後退は、アメリカの国家戦略が失敗したことを意味しないと放言しました。アマラの占拠事件についても、「イラク軍は徐々に移管されている治安維持の責任のほとんど全部に責任を果たせる」と言い、こうした事例は他にもあって、米軍が支援することで解決してきた、一直線には実現できないもので、これからも起こるかも知れないと述べました。そして、これは戦略上の誤り(strategic error)でもなければ、誤算(misjudgment)でもないのだと言いました。ラムズフェルドは、敵はたった一カ所を狙えたに過ぎず、重要なのはイラク全体をイラク人が支配していることだという主旨のことを延々と論じました。ラムズフェルドの意見は、この襲撃がイラク全土に広がる危険性を無視しているように思えます。簡単にいえば、取り繕っているようにしか見えません。もはや、彼の言葉には何の説得力もありません。ラムズフェルドには決して戦争が読めないのです。彼はキャリアだけは長いのに、戦争の正体を解き明かそうとしたことがないのでしょう。そういう人物が「戦争の顔」を理解する日は決して訪れないのです。

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