中国が予想以上の経済制裁を実施

2006.10.18

 昨日今日の動きで、当初の予想から外れた動きが出てきました。当初、北朝鮮との共同事業を中止するとみられた韓国が事業の継続を発表し、強い制裁行動はしないとみられた中国が予想を上回る経済制裁に踏み切りました。

 これは、中国は金正日体制が崩壊しても構わないという態度のように見えます。中国からの送金の停止、北京・平壌間の定期便の停止など、北朝鮮にとって厳しい内容が出ています。もっとも、送金はその他の国も停止しないと意味はありませんが、その切り替えにかかる期間は北朝鮮にとって痛いはずです。

 中国が北朝鮮のトップを取り替えて、この国を支配下に置く可能性が高まったといえます。金正日の統治能力の欠如が現実になるまで北朝鮮を締めつければ、金正日体制は崩壊します。南北統一を望む韓国は、この動きに追いついていけないでしょう。韓国の望みが叶うには、金正日が「このままでは我が国は中国に飲み込まれ、悲劇的な民族の分断が永久に続くことになる。私は38度線を撤廃し、韓国と共に生きる道を選択する」と自主的な決断をくだす必要があります。しかし、その可能性は非常に低いでしょう。中国は国境から支援物資を持ち込んで、北朝鮮の人心をつかんでしまいます。中国の手で北朝鮮の核技術は解体され、北朝鮮の核問題は消滅します。

 このことにはいくつかの問題があります。まず、すべてが金日成にはじまる北朝鮮の体制が一夜にして変わることから起きる人心の混乱があります。日本が敗戦時に軍国主義者が途端に共産主義者に変化したのと同じことが起きるかも知れません。熱烈な金正日支持者が中国共産主義支持者へ変身するのです。逆に、それに激しい抵抗感を持つ者もいるでしょう。次に、アメリカがこうした覇権的な手法を批判する可能性です。北朝鮮があからさまに中国の衛星国となることは、アメリカの大戦略的にも、ブッシュ政権としても、許容できない話です。

 盧泰愚政権には、この大きな動きに対応する力があるようには思えません。日本にとっては、中国に拉致問題での協力を求める選択肢が生まれます。中国は対日的なイメージの向上を図るために積極的に協力してくれるでしょう。中国による北朝鮮の衛星国化は日本にとっては利点が多く、韓国にとっては絶望的な道だといえます。

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