北朝鮮の核実験:今朝の報道を見て

2006.10.10

 まだ、政府レベルでは北朝鮮が核実験を行ったという見解は出ていません。ウラジオストックに近いプリモライ(ロシア領)では放射線の増加をまだ観測していないといいます。比較的近い場所でもまだ変化が出ていないので、韓国や日本、アメリカが観測するのはまだ先でしょう。しかし、その事実は確定的です。そのため、核の恐怖が拡散しはじめています。今朝のテレビを見ていると、今回の核実験で直ちに北朝鮮が日本にミサイルを打ち込んでくるような論調の番組がありました。

 しかし、現状ではまだそのレベルには達していないと見るべきです。仮に、今回テストされたのが650kg級の核爆弾だったとしても、現在はまだ搭載できないと考えるべきです。弾道ミサイルは常に一定の割合の不確実性を持っています。1発を東京に落とすにしても、打ち上げに失敗する可能性もあるし、途中で墜落する可能性があります。共産圏の弾道ミサイルの信頼性は50〜70%の範囲でさまざまです。少なくとも2発撃たないと、確実性はありません。また、北朝鮮はPAC−3による妨害の可能性を想定し、こちらの迎撃能力を上回る数の弾道ミサイルを一度に発射しようとするはずです。だから、一定数の核爆弾を完成させないと攻撃力は完成しないと考えます。だから、一回実験に成功した段階では、まだ攻撃に使えるとは言えません。今後、北朝鮮が実験を重ね、何度も成功させ、一定数を生産してもおかしくない期間が経てば可能性は高まりますが、まだ今はそのレベルではないと見るべきです。

 天然痘ウィルスの方が可能性が高いという話をしていた人もいます。ウィルスに感染させた工作員を日本に入国させるだけで済むというわけです。しかし、生物兵器の可能性はほとんど心配しなくて良いでしょう。生物兵器は効果を予測しがたく、計画が立たないので、過去ほとんど使われてきませんでした。天然痘に関してはワクチンが有効で、治療法も確立されています。運よく大量に感染させられ、ワクチンの在庫が不足しない限り、攻撃は成功しません。生物兵器も化学兵器も散布方法がむずかしいという問題を抱えているのです。

 北朝鮮の輸送船に積んで東京港に進入させて爆発させる方法を提示した人もいます。可能性から言うと考えられることですが、それは武力制裁を招く道です。上陸作戦はできなくても、空爆は可能です。北朝鮮には第7艦隊の位置を突き止めて、空母を攻撃する能力はありません。そうなると韓国軍が米軍に同調し、誘導弾部隊で北朝鮮の地下基地を攻撃する可能性もあります。これは国連憲章第7章第41条の経済制裁が実施されれば海上臨検を行えるので、防止は可能です。日本は第41条の実施を目標に国連外交を進めるべきです。

 今回のテストでの爆発力は各国ごとに分析結果が異なっています。TNT火薬に換算すると、次のような値が出ています。(単位はキロトン)

ロシア
5.0〜15
韓国
0.8〜 5
日本
0.5〜 3


 ロシアの値は幅が広すぎるので、精度の点でやや疑問があります。とにかく、広島型原爆が15キロトン、長崎型が20キロトンだったことを考えると、それよりも小さいものであることは間違いないと考えられます。

 ところで、まだ北朝鮮の農水産物の輸入制限の話が出てこないようですが、早く一時停止や輸入品の放射線量をはじめる必要があります。

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