北朝鮮の地下核実験がもたらす問題

2006.10.5

 北朝鮮が地下核実験をすると声明しました。この声明で最も揺れているのは韓国です。太陽政策で北朝鮮との融和をはかり、同時に近く誘導弾司令部を設置して独自のミサイル防衛体制を作り、これについて、「いつもの瀬戸際外交」と「本当に実験を強行する」という二つの見方が出ています。私はいずれかの見方を選ぶのは、今回は不適当だと考えています。

 北朝鮮は二兎を追っているのであり、核実験を行うつもりでもあり、取引で援助を受けようともしていると考えるべきです。つまり、どちらかが本当と思うべきではなく、どちらも本当と考えるべきです。おそらく、北朝鮮はそれほど高度なものではないとしても、核爆弾を起爆する段階まで開発を進めています。核爆弾の重量はミサイルに搭載できないほど重たいという情報もありますが、アメリカには650kg級の第二世代の核爆弾だという情報もあります。いずれが本当かは確かめようがありません。

 すでに、北朝鮮が核実験が行われた後のことを考えた方がよい段階です。7月にはテポドン2などの発射があり、その上、地下核実験となれば、日本のミサイル防衛にストップをかけることはできなくなります。一番困るのは、ミサイル防衛を支持することで国民が安心してしまうことです。

 色々言われているように、ミサイル防衛は不完全なシステムで、本当に弾道ミサイルを撃墜できるかどうかは分かりません。まず、迎撃実験で使われている標的ミサイルの速度が非公開情報で、標的ミサイルの射程と迎撃高度しか分からないのは、実験の信憑性を疑わせます。米政府が、標的ミサイルは弾道ミサイルを模した性能だと言うのを信じるしかないのです。先日行われた迎撃実験で「テポドン2を模した標的ミサイルの迎撃に成功した」という言い方が使われましたが、実際に飛んでいないテポドン2の飛行特性がどうして分かるのかという批判が反対派から寄せられています。また、かつてSDI計画で行われた迎撃実験でデータの捏造が行われ、あたかも実験が成功したように見せかけられたと経緯もあります。こうした迎撃実験に成功しても、本当のミサイル攻撃を阻止できるかどうかは、本番になってみないと分からないのです。

 現在の国民保護計画は、NBC兵器に対してまったく意味のない対策しか持っていません。ミサイル攻撃の際には、サイレンなどで知らせて国民を建物や地下へ避難させ、あとで救援に駆けつけるという方法です。これは弾頭に爆薬が搭載されていた場合には有効ですが、NBC兵器の場合には被害をより拡大することにしかなりません。建物や地下に逃げ、窓を閉めて出入口に目張りをしても、換気システムが動いていれば、放射線や化学物質、最近などが内部に充満し、避難民を殺すでしょう。地下にいることで防げるのは、爆発時に生じる初期放射線だけで、フォールアウト(放射性降下物)は防げません。アメリカの炭疽菌テロで炭疽菌が換気扇を伝って拡散したことを思い出せば、このことは簡単に理解できます。換気システムを止めれば、問題はさらに大きくなります。密閉された空間に大勢の人が閉じこめられているのです。空気はよどみ、下手すれば窒息死が待っています。放射線で汚染された場合、除染は困難で、放射線のレベルが安全になるまで待つしかありません。長い場合、放射線は2週間も残留するといいます。それまで地下で生き延びることはできません。

 日本政府は単にアメリカの最新兵器のユーザーになりたいだけで、本当にミサイル攻撃があるとは考えていないとしか思えません。国民保護法では、国民を守るために必要な事柄の調査や研究を行える規定があります。しかし、2004年の同法施行後、防災シェルターに関する研究が行われたという話は聞きません。都道府県によっては、政府がそういう研究をすると期待しているところがあるようです。防災シェルターはミサイル防衛システムのように完成を待つ必要がなく、現存する技術で作れます。シェルターの建設基準や、公共のシェルターやそこへの食糧の備蓄、個人用シェルターへの建設補助金や利用方法のルールなど、そういった対策は未だに整備されていません。

 これが国民保護法の現状です。7月のミサイル発射で日本政府は国民にテポドン2の恐怖をたっぷりと植え付けることに成功しています。その直後に地下核実験が行われれば、これはもう誰もミサイル防衛には反対しなくなります。なぜなら、戦争は疎ましいものであり、ほとんどの人が積極的に考えようとしません。そのため、多くの人は戦争について無知なままです。その目の前に脅威が放り出された時、よく考えもせずに口当たりの良い防衛策に飛びつくものなのです。

 本当にミサイル攻撃の脅威があるなら、私なら防災シェルターの建設を考え、その設備や保管する非常食や飲料水の内容を検討します。効果があるかどうか分からない迎撃ミサイルをあてにはできませんし、効果があるとしても100パーセントの迎撃率でないと無意味だからです。それから、防災シェルターは大規模災害にも対応でき、汎用性がある利点も見逃せません。

 北朝鮮が地下核実験をやれば、確実に先制攻撃論が再燃し、ミサイル防衛の支持者が増えます。やるべき順序が逆だという問題には誰も気がつかないでしょう。

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