アルカイダが科学者をリクルート中

2006.9.29

 アルカイダが核を使ったテロを計画しているのではないかという疑惑は以前からありました。military.comの記事によると、最近、イラク国内のアルカイダ指導者アブ・アユーブ・アル・マスリとして知られるアブ・ハムザ・アル・ムハジャが、大量破壊兵器の技術を持ったボイス声明で科学者を募集しました。

 聖戦の戦場はあなたの科学的野心を満足させ、巨大なアメリカ人の基地は、彼らが言うところの、生物兵器や汚い兵器(ダーティ・ボムのことでしょう)など、あなたの非通常兵器をテストする格好の場所です。

 このボイス声明が本人のものかは特定されていません。しかし、アルカイダが危険な兵器を開発できる科学者を募るのは珍しいことです。生物兵器は技術さえあれば、比較的簡単に作れるといいます。ダーティ・ボムは核廃棄物を手に入れるのが大変です。アル・マスリは緊急の応募だとも言っているので、ひょっとすると材料はすでに手に入れているのかも知れません。そうだとすれば、攻撃を食い止めるのは困難です。ダーティ・ボムなら、車に積んで米軍基地や人混みの近くに運び、スイッチを入れて立ち去り、タイマーによって起爆すればよいでしょう。ダーティ・ボムは東海村の臨界事故に似た状況を作り出します。生物兵器は比較的警備の緩い施設の換気システムに放り込む手があります。

 これらの兵器に関する格好の参考書があります。「東海村臨界事故」は臨界事故の恐怖と当時の政府に、まともな危機管理がなかったことを教えてくれます。専門家で構成される原子力委員会が実際には機能せず、東海村が自治体の判断で国よりも先に避難をはじめたことは、国家が動きののろい巨人であることを教えてくれます。原発問題はとかく左派の批判的な本が多い中、本書は原子物理の専門家が書いたもので、問題点を客観的に押さえているところが評価できます。国民保護法が施行された現在でも、状況はそんなに変わっていないのではないでしょうか。「バイオテロ!—細菌兵器の恐怖が迫る」は最近の生物兵器事情の詳細なレポートです。1990年代に米政府内で起きた生物兵器に関する議論と対応、ならず者国家やテロ組織の実情などを紹介し、生物兵器の脅威は実在するが、同時に誇張されてもいると教えています。私はこれらの本を最近読んだのですが、非常に感心させられました。

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