靖国問題だけが安倍内閣のテーマではない

2006.9.28


 ニューヨーク・タイムスが安倍総理に靖国参拝をしないようにという主旨の社説を掲載しました。原文を見ると、あまり長い文章ではなく、一般的な意見を述べたもののようです。

 なぜ、アメリカがこの件で中国の肩を持つのかといえば、第2次世界大戦でアメリカは中国の求めに応じて日本を攻撃することになったために他なりません。日米開戦の直接の引き金となったハル・ノートも、最初はもっと穏健な内容だったのが、中国やイギリスの要請で強硬な要求に変えられました。そのため、日本は開戦の準備から引き返せなくなりました。中国とアメリカは現代においては対立していますが、当時は連携していたのです。それも、当時は国民党の要請に応じたのが、後に共産党が実権を握るという変化もありました。それでも、支援先が中国であったのは変わることがないため、靖国問題に関しては日本を支持しないのです。第2次世界大戦の評価はすでに確定しています。いまさら、それを変えることはできません。東京裁判の問題は、法律の関係者には問題点が理解されています。しかし、政治的にはそれを公に口にできないという常識が働くので、この問題は永遠に日本に不利に働くことになります。正直なところ、いくらこの問題を言い続けても、日本に形勢が傾くことはないとしか思えません。

 靖国問題で躓いているよりも、年金問題、医療保険問題が重大な経済問題になる前に手をつけるべきです。小泉政権は郵政問題を扱いましたが、これは年金と医療の問題に比べると優先順位は低く、後回しにすべき問題といわれていました。マスコミも、こうした問題がすでに解決済みであるかのように組閣を報じていますが、アジアとの関係改善だけが問題のように言うのは誤りです。安倍総理が「美しい日本」という、よく分からないスローガンを掲げたことも、本来取りあげるべきテーマから目を背けているように思えます。

Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.