パウエル、マケイン議員に警鐘を鳴らす

2006.9.15

 コリン・パウエル元国務長官が、共和党のジョン・マケイン上院議員に宛てた手紙がワシントン・ポストに載りました。

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拝啓 マケイン上院議員

 私は町へ戻り、議会での第3ジュネーブ条約を見直す議論のことを知りました。私はこうした動きを支援しませんし、私が昨年支援した拷問に関するマケイン改訂と一貫性がないものと確信します。

 私は統合参謀議長ジャック・ベッシー大将があなたに送った力強く説得力のある手紙を読みました。私は彼の説得力ある主張の論調を強く支持します。世界は我々のテロリズムに対する戦いにおける道徳基盤に対して疑問を抱きはじめています。第3ジュネーブ条約の見直しは、この疑いを増す可能性があります。それだけでなく、我々の兵士を危険にさらす可能性があります。

 私はジャック・ベッシーと同じくらい「The Armed Forces Officer」に精通しています。それは第2次世界大戦の恐怖のあとに書かれ、後に国防長官になったジョージ・C・マーシャル大将が、拘置に関する我々の道徳的責任を世界に告げ、我々の兵士に思い出させるために使いました。

敬具

ジョン・マケイン上院議員

コリン・パウエル

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 ジュネーブ条約は第1から第4までの条約から成り、第3ジュネーブ条約は、捕虜条約とも呼ばれ、捕虜になる資格や捕虜収容所の運営に関する規則を定めています。いま、米議会が何を見直そうとしているかと言えば、テロ容疑者を裁く軍法委員会の設置と第3条約が認めるよりも厳しい尋問をCIAに認めることです。

 マケイン改正は、2005年にマケイン議員の提案で、抑留者の尋問に関する基準を定めたフィールドマニュアルの確立と、抑留者を赤十字国際委員会に登録するよう要求したことです。マケイン議員は「我々の敵は同情に値しない。しかし、これは彼らが何者であるかという問題ではない。我々が何者かという問題だ」と主張しました。残念ながら、ワシントン・タイムスは、彼の叫びはハリケーン・カトリーナに押し流されたと書いています。

 それから、「The Armed Forces Officer」はおそらくこの本のことだと思われます。

 パウエルが主張しているのは、捕虜の取り扱いを必要以上に厳しくすれば、必ず敵の怒りを買い、最前線の兵士に対する過度な暴力の原因になるという、陸軍の軍人ならよく知っている教訓です。戦争を研究したことがない文民は、捕虜を締め上げた方が最前線の兵士を手助けしているような気分になるものですが、戦史はそうではないことを教えています。すでに、アメリカは捕虜の取り扱いに関しては、指導的な立場を失い、他国の人権侵害を批判することができない状態になっています。

 米国内だけでなく、ヨーロッパも対テロ戦から抜けようとしはじめています。アフガニスタンでのタリバン勢力の復活に関して、NATO諸国が増派に対して一様に否定的な態度を示したという報道がありました。日本も自分の態度をはっきりと示さないと、最後までブッシュ政権につきあうことになるでしょう。

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