ジョー・ギャロウェイ氏のコラム

2006.9.11

 同時多発テロから5周年ということで、各メディアが力の入った特集記事を報じています。military.comはその一つとして、ジャーナリスト、ジョー・ギャロウェイ氏のコラムを掲載しました。ギャロウェイ氏は、映画「ワンス・アンド・フォーエバー」の原作者でもあり、イア・ドラン峡谷の戦いに従軍記者として参加した経歴を持ちます。映画では、バリー・ペッパーが彼の役を演じました。

 ギャロウェイは記事を書く1週間前、1ダースを超える現役退職を問わない陸軍と海兵隊のトップ将校に、我々はイラクで何をすべきかを尋ねました。すると、全員が「イラクにおけるアメリカの戦略と戦術は失敗に終わった。ブッシュ大統領の製作はさらに多くの危険を生み、これ以上の危険を作り出した」と答えたと言います。しかし、直ちに撤退すべきと答えたものはおらず、ごく一部が増派を主張し、イラク侵攻直前に統合参謀本部長を辞任したグレッグ・ニューボールド海兵隊退役中将などごく少数が、撤退を検討すべき時が来たと述べました。一番積極的な意見を述べたのは、ラリー・ウィルキンソン退役大佐で、まだイラクで成功するチャンスはあると述べています。しかし、「大きく考えるべきです。チェイニーやブッシュ、ラムズフェルドのように馬鹿げた大きさではなく、テディー・ルーズベルト(セオドア・ルーズベルト大統領のこと)のように賢明な大きさで」という彼の言葉からは、具体的な政策は見えません。

 それぞれのコメントを見ると、どれも似通っており、すでに言われたことの繰り返しであることに気がつきます。軍高官ですら、もはや同じことを話すしか手がない状況。これがイラク侵攻の結果です。

 最近、今年摘発された9・11以後、米国内では最大のテロ計画犯も、その裁判を通じて、アルカイダにシンパシーを感じた夢想家たちがFBIのおとり捜査に引っかかっただけだったことが明らかになりました。イギリスの航空機同時爆破計画にも疑問が残されており、裁判の推移が注目されています。同時多発テロを引きずり、テロの脅威だけに注目すべきではありません。いま心配すべきなのは、イラクの混乱が他の地域に拡大し、より大きな戦争になることです。

 ブッシュが戦略を誤ったのは、彼が普通の人間だったために他なりません。戦争は、孫子が「兵は詭道なり」と言うように、普通ではない特別なことなのです。懐刀のラムズフェルドは若い頃アマレスのスポーツマンで、決して勝負を捨てないタイプの選手でした。これはスポーツマンとしては立派でも、戦略家としては落第です。戦争はスポーツとは違い、勝負にならない戦いは決してやってはならないのです。アメリカは対テロ戦争の主戦場ではないイラクに主力を投下してしまいました。対テロ戦争に主戦場はないことに、アメリカは気がつくべきでした。もちろん、アメリカは全兵力をイラクに投下したわけではありませんが、予定以上の戦費がかかっている点で同等の問題となっています。「戦略の失敗は戦術で補えない」という軍事の原則は、イラク戦争でも生きています。考えてみると、戦略のポイントはそう多いわけではありません。勝利に行き着くまでの方策をすべて検討し、最も可能性の高い方法を実施することだけです。これさえ守れば大きな失敗はしないように思われますが、歴史は多くの国がミスを繰り返すことを教えています。戦争を調べていると、いつもこういう疑問にぶつかるのです。

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