ブッシュ大統領の演説 その1

2006.9.7

 ブッシュ大統領が、世界はヒトラーやレーニンの脅威を見逃し大きな代償を払った」と演説で述べたという報道を目にしたので、一体どんな演説だったのかと思い、ワシントン・ポストに掲載された演説の全文を読んでみました。大統領の演説の内容は、マスコミではごく一部しか報じられず、どんな雰囲気なのかをつかむことがむずかしい上、要約が不適切な場合もあるので、あえて全文を二回に分けて掲載します。皆さんが、これを読んでどのように感じるかを期待しながら…


SEPTEMBER 5, 2006
2006年9月5日 ワシントンDC

ブッシュ:丁寧なご紹介ありがとうございます。私は全米将校協会の皆さんと一緒に並んでいることを光栄に思います。私はここにいる理事の皆さんと私にこの演説の演壇を与えてくださった指導者の方々に感謝します。

 私は米軍の現役兵士の皆さんとここにいることを誇りに思います。

 皆さんの国家への貢献に感謝します。私は皆さんの最高司令官であることを誇りに思います。

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 私は、2001年9月11日からアルカイダとそのテロ同盟国の攻撃を受けた多くの国々を代表する外交団のメンバーと共にいることも喜ばしく思います。

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 皆さんがここに来たことは、我々がすべての文明的な国家を脅かす敵との世界的な戦争に当面していることを我々に思い出させます。そして、今日、文明的な世界は我々と共に我々の自由を守るために連携しています。我々はテロリストを打ち負かすために連携しています。そして、我々は世代を経る平和を確保するために働いているのです。

 私は私どものアル・ゴンザレス司法長官が今日参加したことに感謝します。ご参加ありがとう。

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 国土安全保障長官マイケル・チャートフ氏もおられます。

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 合衆国上院議員の御3人…合衆国の3人の重要メンバーをご紹介したい…アラスカ州のテッド・スティーブンス上院議員代行。

 ご参加ありがとう、上院議員。

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 歳出委員会議長、ミシシッピ州のチャド・コクラン上院議員。

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 軍事委員会議長、ヴァージニア州のジョン・ワーナー上院議員。

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 私は、ノーム・ライアン(博士)、同様に、彼のリーダーシップに対して感謝します。私はウォルター・リード陸軍病院で今日ご参加くださった皆さん全員に感謝します。
 私は、我々が軍務につく人々に大がかりな健康医療を提供している我々の軍隊の両親に話すつもりです。私は、あなたがたが怪我から回復するのを援助するために最高の医療を提供しているベセズダとウォルター・リードの人々を誇りに思います。あなたがたの勇気に感謝します。本日はご参加ありがとう。皆さんのご快癒に神のご加護を。

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 来週、アメリカは2001年9月11日の5回目の記念日を迎えます。この日が近づくと共に、苦しみの記憶が溢れます。我々は航空機が世界貿易センタービルに飛び込む恐ろしい光景と、我々の目の前でタワーが崩れ落ちるのを見たことを忘れていません。
我々は国防総省が破壊され、炎上するのを見たことを忘れていません。
 我々はビル…燃えさかるビルにレスキュー隊員が救助のために突入し、生還しなかったことを知っています。
我々はハイジャック機のコックピットに突撃し、テロリストたちが目標に到達し、無辜の市民をさらに殺戮することを止めた勇敢な乗客たちを忘れていません。
 我々は、かかる危害をわが国に課した敵の冷酷な残忍さ、オサマ・ビン・ラディンが率いる敵が、1日で約3,000人の大虐殺、引用すると「我々以外の人類にはない、比類なき壮大な武勲」と宣伝したことを忘れていません。
 わが国が攻撃を受けてから5年間で、アルカイダとそれに誘発されたテロリストたちは世界中で攻撃を続けています。彼らは無辜の人々を、ヨーロッパやアフリカや中東、中央アジアや極東その他の地域で無辜の人々を殺し続けています。

 ごく最近、彼らは9月11日以来、最も野心的な計画、大西洋を越えてアメリカに向かう旅客機を爆破する計画を試みました。
 わが国が攻撃を受けてから5年後、テロリストの危険はまだあります。我々の国は戦争をしています。そして、アメリカと我々の同盟国はこの戦争を厳しい決意のもと、世界中で戦っています。
 同盟するパートナーたちと共に、我々はテロリストの聖域を排除し、彼らの財源を断ち、中心的メンバーを殺害、逮捕し、国内と外国にいるテロリストの細胞を破壊し、彼らが実行する前に攻撃を阻止しています。
 我々はあらゆる最前線でテロリストに攻勢をかけており、まさしく完全な勝利を収めるでしょう。

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 攻撃を受けてから5年間で、我々はこの戦争で相対している敵について多くを学びました。我々はビデオや音声、手紙や彼らがウェブサイトに掲示した声明から彼らについて学びました。我々はテロリストたちが我々を理解するつもりはないと供述した捕虜から敵について学びました。
 また、これらの供述や陳述は、我々の敵の心理、彼らのイデオロギー、我々を打ち負かすための野心と戦略について明快な洞察を与えました。

 我々は彼らが話したことで、テロリストたちの意図が何かを知りました。そして、我々は彼らの言葉を真剣に取り扱う必要があります。だから今日、私は彼らが何を信じているか、彼らが何を達成することを望むか、そして、彼らがどのようにそれを達成するつもりかテロリストの自身のことばで述べるつもりです。
 私は敵がどうやって我々の継続的な攻撃とイスラム過激主義の別の重圧によって引き起こされた脅威に適応したか述べたいと思います。
私は、戦場でテロリストを打ち負かしてアメリカの国防を追求し、憎むべきイデオロギーを思想の戦いの中で打ち負かす戦略を説明したいと思います。
 2001年9月11日に我々を攻撃したテロリストは無慈悲な男たちですが、狂人ではありません。
 彼らは明確で集中的なイデオロギーの名において殺戮し、信念の集合体は悪魔的ながらも凶器ではないのです。
 こうしたアルカイダのテロリストと彼らとイデオロギーを共有する者たちは、凶暴なスンニ派過激論者です。
 彼らは急進論者と忍耐を拒絶するイスラムの背教者の視点によって導かれ、すべての反対意見を粉砕し、政治的権力の追求のために、無辜の男性、女性と子供を殺すことを正当化します。
彼らは、彼らがカリフと呼ぶ、すべてが彼らの憎むべきイデオロギーによって支配される、暴力的な政治的なユートピアを中東の全域に擁立することを望みます。
 オサマ・ビン・ラディンは9/11の攻撃を、彼の言葉で「回教徒の統一と正義のカリフを確立するための大きなステップ」と呼びました。

 このカリフは、ヨーロッパから北アフリカ、中東と東南アジアまでに広がる、現在と過去すべてのイスラム教国をカバーする全体主義のイスラムの帝国です。
 アルカイダ自身が、我らにこれを告げました。
 およそ2カ月前に、テロリストのザワヒリ…彼はアルカイダの副司令官です…彼はアルカイダは、スペインからイラクまで、イスラム教の祖国であるすべての土地にその教義を浸透させるつもりだと宣言しました。
 彼は「全世界は我々のための未開地なのだ」と言いました。
 我々は、この急進的な帝国が実際にどう見えるかを知っています、なぜなら我々は過激派がアフガニスタンの人々に彼らのイデオロギーを浸透させた方法を見ているからです。
 タリバンとアルカイダの教義の下で、アフガニスタンは全体主義の悪夢、女性は自分たちの家に閉じこめられ、男性は礼拝を欠席したために殴打され、少女は学校へ行けず、そして子供は凧揚げのようなささやかな楽しみを禁じられた国でした。
 宗教警察は違反行為を見つけて市民を殴打、拘留するために町を徘徊しました。
 女性は衆目の中で鞭打たれました。
 略式の死刑執行が、カブールのサッカースタジアムにおいて、群衆が声援を送る中で開催されました。
 そして、アフガニスタンはアメリカや、イスラム国を含め、その他の文明世界に対する恐ろしい攻撃の足がかりになりました。

 これらのスンニ派過激論者のゴールは、彼らの急進的なイメージで全部のイスラム教の世界を作り直すことです。
 彼らの帝国の目的の追求において、過激論者は、彼らが異端者と呼ぶ、アメリカ、世界の自由諸国、ユダヤ人、イスラム過激主義のビジョンを拒絶するすべてのイスラム信者と、妥協したり対話はしないと言っています。
 彼らは自由世界との穏やかな共存の可能性を拒絶します。
再び、ここで今年初期のオサマ・ビン・ラディンの言葉を取りあげます。「地球上で我々を取り巻く不信心者と共に暮らすくらいなら死んだ方がよい」。
 これらの過激派は自由に対して、彼らの決して譲らない敵意を宣言しました。
 彼らと交渉ができると考えるのは愚かです。

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 我々は捕虜にしたテロリストの供述の多くから、敵の妥協しない性質を知ります。
 ここにふたつの実例があります。
 アフガニスタンの解放の後、連合軍がテロリストの隠れ家を捜索して、アルカイダ憲章のコピーを見いだしました。
 この憲章は、すべての者がアラーを信じるまで敵意は絶えない、我々は敵と妥協しない、彼らと対話する余地はない、と述べています。
 イギリス警察が2000年にロンドンのテロリストを急襲した際に見つかった別の書類は、「人質の拷問と殺害のガイドライン」のようなタイトルを持つ章を含んだ不気味なアルカイダのマニュアルでした。

 このマニュアルは、不信心者とは停戦することはなく、むしろ対決するという彼らのイスラム教のビジョンを宣言しています。
 この対決は「銃弾による対話、暗殺という理想、爆撃と破壊、そして大砲と機関銃による外交交渉」を命じています。
 その他の供述調書はまた、イスラム諸国への浸透、テロリストの居留地の確立、整復転覆と全体主義の帝国の擁立というアルカイダの戦略を示しています。
 我々は、この戦略を最近のイラクでの急襲で発見したアルカイダの書類から見いだします。それは、イラク西方のアンバル州に潜入して、乗っ取る彼らの計画を説明していました。
 この書類は、教育省、福祉省、司法省を含むその地域のための複雑なアルカイダの統治構造と、逮捕、殺人、破壊に責任を持つ実行部隊を規定しています。
 彼らが公表した声明によれば、彼らが目標を定めた国は、中東からアフリカや東南アジアにまで及びます。
 この戦略を通して、アルカイダとその同盟者は、新しい攻撃を計画し、自由世界と対決して最終的に破壊するという統一された全体主義的なイスラム国を作るという彼らのビジョンを前進させるために、世界中に分散した作戦基地を構築しようとしています。

 これらの乱暴な過激論者は、このビジョンを実現するために、彼らは最初に、アメリカ合衆国という彼らの前に立ちふさがる大きな障害物を取り除く必要があります。
 アルカイダによれば、アメリカを破るための戦略はふたつの部分からなっています。
 まず、彼らは世界中でテロの戦役を遂行中です。
 彼らは、海外の我が軍に目標を定め、アメリカの人々が死傷者にうんざりし、戦いを止めることを期待しています。
 そして彼らは、我々を威嚇し、我々の経済を崩壊させることを望み、本土においてアメリカの金融の中心地と経済インフラに目標を定めています。
 ビン・ラディンはこれを彼の「破産を狙った出血計画」だと呼んでいます。
 そして彼は、9/11の攻撃を、このような計画が成功させられる証拠だと主張しました。
 9/11の攻撃で、 オサマ・ビン・ラディンは、アルカイダは500,000ドルをこの事件に費やし、他方アメリカは最も低い見積もりで5000億ドルを失ったので、アルカイダのドルがアメリカの百万ドルを打ち負かしたことを意味すると言いました。
 ビン・ラディンはこの経験から、アメリカには信じ難いほどの軍事力と活気に溢れた経済があり、確かに大きなパワーを持っているが、これらすべてが非常に弱い、そしてうつろな土台の上に築かれていると結論しました。
 彼は、それ故に、「薄っぺらな基盤に照準を定め、彼らの弱点に集中することは非常に易しい。そして、我々がこうした弱点の10分の1を狙えるとしても、我々は殺到して、それらを破壊することができるだろう」と述べました。
 第二に、テロの戦役とともに、敵は宣伝戦略を行っています。
オサマ・ビン・ラディンは、連合軍が2002年にアフガニスタンで発見したタリバンのリーダー、ムラー・オマールへの手紙でこの戦略を説明していました。
 手紙の中で、ビン・ラディンは、アルカイダが、彼の言葉でいうと、アメリカの人々と米政府の間にくさびをうがつ宣伝キャンペーン、に着手するつもりであると書いています。
 ビン・ラディンが言うには、この宣伝キャンペーンは、アメリカの人々に、米政府がさらなる経済と犠牲者の損失をもたらすことを含む大量のメッセージを送ります。
 そして彼は、人々が大投資家、特にユダヤ人に仕えるという犠牲を強いられていると言います。
 ビン・ラディンは、これらのメッセージを届けることで、アルカイダはアメリカの人々が米政府へアフガニスタンでの作戦行動を止めさせる圧力を生むことを狙っていると言います。
 ビン・ラディンと彼の同盟者は、アメリカを撤退させ、経済を破壊することができると絶対的に確信しています。
 彼らは我々の国が弱くて、退廃的で、辛抱強さと決心に欠け、悪に染まっているいると信じています。

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 オサマ・ビン・ラディンは、米軍の敗北は、1983年のベイルートにおいて米軍が敗北したことは、アメリカが戦いに絶えられない証拠だと書きました。
 彼は、ソマリアにおいて、アメリカは遠征し、続いて失望し、その後敗北と不成功に終わった、と述べました。
 そして去年テロリストのザワヒリは、アメリカ人は勝つ見込みがないことをなによりもよく知っている。ベトナムの亡霊はすべての出口を閉じている、と宣言しました。

 これらのテロリストはアメリカと我々の連合を、彼らは5年前に連合軍が彼らを追い出した安全な隠れ家を復旧できるよう、アフガニスタンから追い出すことを望んでいます。
 けれども彼らは、アメリカに対する彼らの闘争で最も重要な戦線がイラクであり、ビン・ラディンがカリフの首都と宣言した国であることを明らかにしました。
 ここにビン・ラディンの言葉があります。「私は今いまイスラム国全体に言う。聞き、そして理解せよ。今日、世界全体で最も重大な問題は、イラクで荒れ狂うこの第三次世界大戦である。」
 彼はそれを「不信心者とイスラム教徒との運命的な戦争」と呼んでいます。
 彼は「世界全体がこの戦争に注目し、それが勝利と栄光、あるいは苦難と屈辱に終わるであろうと見ている」と言います。
 アルカイダのために、イラクは破壊されておらず、彼らの対米戦争にとって、イラクはこの戦いの結末が決定される主戦場なのです。
 ここに、我々をイラクから追い出すのに成功したらアルカイダが行うと書いたものがあります。
 テロリストのザワヒリは、アルカイダはいくつかの逐次的なゴールを成し遂げるであろうと言いました。
 最初のステージは、アメリカ人をイラクから追い出すこと。
 二番目のステージは、イスラムの権威者あるいは首長を確立し、それがカリフのレベルになるまで発展させ、支援すること。
 三番目のステージは、イラクに隣接する非宗教的な国に聖戦の波を拡大すること。
 そして四番目のステージは、イスラエルと一緒の対決。
 これらの悪魔的な男たちは、彼らの望みに対する根本的な脅威が、自分で統治し、自分で維持し、自分で防御できるイラクであることを知っています。

 彼らは、選べるものならば、イラクの人々が過激論者が設立を望んでいる全体主義の国家に住むことを選択しないのを知っています。そして、我々がそうしてはならず、我々が望んではならぬのは、イラクの人々を見捨てることでイラクにおいて敵に勝利を与えることです。

(拍手)

…続く

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