米国防総省が「イラクに内戦の危機」

2006.9.2

 ワシントン・ポストによれば、米国防総省が議会に「イラクが内戦状態になる恐れがある」という報告書を出しました。このことは7月25日の記事で書きましたが、やはりアメリカ自身も懸念していたようです。

 報告書によれば、過去3ヶ月で、殺人事件が急増し、毎月、3,000人以上のイラク人が死傷しており、そのうち2,000人は派閥抗争が原因です。バグダッドの検死官の報告では、6月の死者は1,600人、7月は1,800人で、その90%が処刑スタイルによって殺害されていました。派閥抗争は、南はバスラから北はキルクークまで拡大しています。また、シリアとイランが抗争を支援しています。

 もともと、イラクを民主化しようという発想が無理だったのです。イスラエルが誕生する前から、中東は激しい派閥抗争があり、パレスチナ問題が解決したあとも抗争を繰り返すだろといわれているほどです。そこに外国の軍隊が乗り込んで政府を作るのは無理なのです。

 この報告書が出たのも、アメリカがいよいよイラクから足を抜こうという意思の表れでしょう。イラクが民主化できるまで米軍は留まるとした米政府の主張は達成されませんでした。しかし、達成したようにみせかけることはできます。そうやって、米軍を撤退させる工作がこれから顕著になっていきます。その動きを見逃さないようにしなければなりません。

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