中東情勢は嵐の前の静けさか?

2006.8.30

 読売新聞が報じたところによると、アナン国連事務総長がレバノンのハレト・ハレイク地区を訪問したが、地元住民数十人がヒズボラ指導者ナスララ師の写真などを掲げ、「アナンは米国の手先だ」と叫んだため、アナン氏は10分ほどで退去せざるを得なかったといいます。ハレト・ハレイク地区はヒズボラの拠点で、地元住民はヒズボラを支持しています。レバノン国民にすると、まったく無計画に戦争をはじめたナスララ師よりも、アメリカ寄りのアナン事務総長の方が問題だという訳です。日本人の目から見れば、国連とアメリカは対立しており、この批判は不当なものに感じられますが、立場が違えば見えている現実も異なる典型例と見るべきでしょう。拉致されているイスラエル兵の解放が実現しなければ、停戦が無効になる可能性が高まります。アナン事務総長の訪問がこうした形に終わったことは、先行きの厳しさを思わせます。一方、イスラエルは戦争指揮が批判された件で調査委員会を設けることになりました。このことは、ヒズボラを勢いづかせるかも知れません。今回の停戦が短期で終わる兆候が出てきました。

 一方、Iraq Sunによれば、イラクでは、9月からイラク陸軍の指揮権が米軍が主導する連合軍から移譲され、イラク人自身の手によって10個師団を統括することになります。これが吉と出るか凶と出るかが問題です。訓練で苦労が続いていたイラク陸軍が10個師団を編成したとしても、それは基準をかなり下げてのことでしょう。どんな装備で武装するのかも気になります。数ヶ月前に見たドキュメンタリー番組では、兵士には自動小銃しか与えられていませんでした。分隊支援火器やRPGといった歩兵の戦闘力を高める武器は持っていなかったのです。これでは、数では勝っていても、武装勢力の方が強力な武器を持っていることになり、待ち伏せ攻撃で一方的な不利になる恐れがあります。かといって、あまり強力な武器をイラク軍に与えると、イラク軍同士で戦闘になる可能性があります。すでに、異なる部族のイラク軍部隊が銃撃戦を行った前例があります。いずれ、どこかでイラク軍の装備品の情報を入手できるでしょう。

 現在、中東は静かなようですが、嫌な雰囲気が漂っています。自分がアラビア語を読めれば、もっと多くの情報が手にはいるはずなのにと焦燥感を感じています。

 余談ですが、Iraq SunからStars and Stripesの記事にリンクされていて、その記事はテレビ番組「芸能界の厳しさ教えます」の収録が横田基地のハンガーで9月8日に行われる予定と伝えています。インターネット時代になる前は、外国の娯楽番組を知るのは大変なことでした。言葉さえ分かれば世界中の情報を直に読めます。そうした力を利用して、紛争を防止することはできないかを考えてしまいます。

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