吉進丸事件・高橋道知事の弔問は誤り

2006.8.21

 昨日、高橋はるみ北海道知事が吉進丸の死亡した船員を弔問に訪れたという報道に接して驚きました。これで地元が「多少の密漁は大丈夫だ。知事も世論も味方だ」と勘違いするのは確実です。看過できないと思ったので、昨日、北海道に意見を書き送りました。漁業で密漁は公然の秘密です。領土問題は別に主張していくべきであり、密漁を肯定するような真似を自治体がやってはいけません。また、北海道海面漁業調整規則という地方自治体の法令にも違反している疑いがある場合、弔問は差し控えるべきです。北海道海面漁業調整規則の何に違反したのかは分かりませんが、規則の内容からして、許可操業区域外での操業にあたるものと思われます。

 今回の事件が、ロシア警備艇が強引な追跡を行って日本人乗組員を死傷させたものなら厳重抗議の余地があります。今のところ、ロシア側に重大な過失があったという証拠はなく、むしろかつてよりは対応がソフトになった印象しかありません。

 日本は、竹島問題での韓国の居丈高な態度に閉口しています。「日本軍国主義者がわが国の領土、独島を侵略しようとしている」という韓国の主張と、「北方領土を不法に占拠するロシアが、不法にわが国の国民を殺害、拿捕している」という日本の主張は同じ理屈です。最近、日本人は自国の視点でしか物事を考えないようになっていますが、このように立場を変えて考えてみるべきです。

 以前から指摘しているように、政府の思惑とメディアの指向が一致した時、批判の余地がない世論が生まれます。今回のような状況はその典型です。こういう傾向がいつか、日本にとって致命的な失敗を犯させる原因になるのではないかと心配になります。

 それにしても、いくら夏休み中とはいえ、国会議員の反応が静かなのには驚かされます。もともと、小泉総理は現在起きている隣国との外交問題には弱いのですが、この事件でも何の動きも見せていません。

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