北朝鮮ミサイルは30〜40km内に着弾

2006.8.10

 防衛庁はミサイルの探知能力を隠すため、7月5日に発射された北朝鮮のミサイル(テポドン2を除く)の着弾位置を50kmの範囲内としました。ところが、毎日新聞によれば、昨日、名古屋市内で講演した鈴木政二官房副長官がうっかり30〜40km四方内と発言してしまいました。先に、日本テレビの番組が、4発は10km内に着弾したと報じていますから、2発がその外側に着弾したことになります。いずれにしても、スカッドとノドンのCEPは10kmで変わらないのですが、その外側への着弾状況が分かったのは非常に有益です。しかし、記事の結論はいけません。「6発は正確に着弾」と言えるはずがないのです。30〜40km四方に落下するミサイルなど、たとえ核弾頭を乗せたところで目標を破壊できないかも知れないのですから。

 イージス艦の探知能力は極秘事項です。もちろん、高速で飛行する物体を正確に捉えるのですから、必要な精度は想像できます。それを隠すために数字を大幅にぼかす必要はありません。正確に発表した方が地方自治体が対策を考える時の参考になります。国民保護法成立以来、自治体にも軍事が分かる人が必要になり、自衛隊OBを迎え入れる自治体が増えているといいます。しかし、彼らにも肝心のデータがぼかされているのでは、判断のしようがないというものです。

 何でも「防衛上の理由により」で秘密にする傾向は好ましくありません。軍事的な利益と民主主義的な情報公開はバランスを取るよう努めなければなりません。また、最近はその傾向が進んできました。今年の4月には、サンフランシスコ・クロニクル氏が、大統領専用機の内部や対空防御能力に関する政府文書を報じ、その内部がかなり分かるようになりました。こうした状況で何でも秘密で通すのはむずかしいでしょう。

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