少しずつ明らかになるレバノンの戦況

2006.8.4

 ようやく、イスラエルがカナの空爆を誤爆と認めました。しかし、その理由は納得できません。イスラエル軍は空爆した建物を「テロリストの隠れ家」と判断したので、2発のミサイルを撃ち込んだということです。myu5さんの投稿で示唆があったとおり、イスラエル軍はランチャーを爆撃したのではなく、最初から建物の爆撃を意図していました。1発は不発と報じられていますが、大きく外れて着弾した可能性もあります。イスラエル軍が「テロリストの隠れ家」と判断したのなら、相当の時間を偵察に費やして建物を監視していたはずで、女性や子供が出入りしているのも分かったはずです。同時に、イスラエル軍はカナ村の住民には十分な退避勧告をしていたと主張しています。確かに、放送や電話など、複数の方法で住民に警告が行われており、この点に関しては一般的な戦争以上に住民に対する配慮は払われていると言えます。しかし、ヒズボラが住民を人間の盾にしたという意見は推測に過ぎず、言い過ぎでもあります。今回示された証拠の中には、ランチャーと建物に関連する人の動きがあった証拠が含まれていません。ランチャーの周囲にいた人が建物に入るところを確認したのならともかく、ランチャーが建物の近くにやってきて、ミサイルを発射してから移動しただけでは、関連性を主張することはできません。イスラエル軍としては、リタニ川以北に脱出する方法を示しており、通告もしているのだから、これ以上の責任を負う気はないのでしょう。戦時における保証というものは、精々がこの程度だということを、我々も肝に銘じておく必要があります。

 イスラエル軍は国境から6km地点まで進撃し、20カ所の村を占領したということです。該当地域にある村を概ね全部占領したことになり、ビントジュバイルも陥落したはずです。実に標準的な戦果で、やり方も定石的です。イスラエル軍には、レバノン側に入り込んでいる東部国境からも侵入し、いち早くリタニ川南岸を占領する構えを見せ、包囲殲滅を狙っているように見せるという手もあります。そうすることで、捕獲を避けようとする車載型のミサイル・ランチャーをリタニ川北岸以北に撤退させることができます。そうすれば北イスラエルに着弾するミサイルの攻撃力を若干減少させることができます。しかし、イスラエルは常に手堅い方法を選びたいようです。ヒズボラはミサイルを多数発射していますが、その命中率の悪さのため、十分な効果を上げられていません。命中率の悪さ、高コストから、成果を上げるのが難しいのがミサイル攻撃の欠点です。集結している敵部隊を攻撃するのならともかく、都市爆撃に使うのは難しいということは、頭に入れておくべきポイントです。

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