急速に情報が減るレバノン情勢

2006.8.3

 ワシントン・ポストによれば、イスラエル軍は一気にリタニ川までヒズボラを押し戻すつもりのようで、クレイラからホウラまでの防衛線は関係なくなりそうです。イスラエル軍のシュキ・シャチャー准将(Shuki Shachar)によると、投入兵力は歩兵を主力とする6個旅団とのことですが、これでは少ない感じがするので、第一陣だけの数でしょう。アナリストは投入された兵力は少なくとも10,000人か18,000人以上としていますが、最終的には動員した兵士のほとんどが投入されていくはずです。military.comも、投入兵力は10,000人以上としており、国内メディアの大半が報じた7,000〜8,000人とはかなり多くなっています。7,000〜8,000人では、南レバノンの地域でゲリラを掃討するのは無理です。

 また、ベッカ渓谷と南レバノン全域の7カ所で激しい戦闘や空爆が行われているとは分かるのですが、正確な場所が分かりません。ベッカ渓谷はヒズボラの活動拠点と言われており、そこを叩く意味があるのだと思います。南レバノンは北へ通じる主要道路のすべてを押さえにかかっているのでしょうが、それだけで十カ所近くありそうです。これらとは別に、バールバグ(Baalbek)のダル・アル・ヒクマ病院(Dar al-Hikma)を特殊部隊で急襲し、ヒズボラの幹部数名を殺害及び拉致。バールベグはレバノンよりも北にある町で、こうした場所に襲撃をかける能力は高いものがありますが、戦争の勝敗そのもにつながるものではありません。

 しかし、ヒズボラは驚くほど粘り強い反撃を行っています。国境近くにあるアイタ・アル・シャーブ(Aita Al-Shaab)に設けたイスラエル軍の指揮所に対戦車ミサイルが撃ち込まれ、3名が死亡し、25名が負傷しました。この町の場所ははっきりと分かりませんが、ビントジュバイルの南に似た名前の町がいくつかあるので、この付近でしょう。兵力が集中的に投入されているビントジュバイルの近くでこんな攻撃を行うということは、高い戦闘能力を持っているといえます。また、ミサイルも多数を発射しており、イスラエルの攻勢の効果を生む段階までは行っていません。

 それから、空爆を受けた町のパノラマ写真が何点かワシントン・ポストに掲載されました。ビントジュバイルの写真もあります(画像を見るにはQuickTimeが必要)。8月1日に掲載されているので、休戦中に撮影したものと思われますが、ビントジュバイルはほとんど廃墟です。すでに陥落していてもおかしくない感じですが、イスラエル軍がどこまで進んでいるのか、情報が少なすぎます。記事の分量はそれなりにあるのですが、状況を把握するには不十分です。一部はそれなりに進撃していてもおかしくありませんが、ヒズボラの拠点を探しながらなので時間がかかっているのだろうと想像します。今日中に当局者のまとまった発表があると思います。

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