日米がミサイル解析の結果を公表か

2006.7.30

 今朝の朝刊で、ようやく防衛庁が北朝鮮のミサイルについてデータを修正することが報じられました。防衛庁は週内に結論を公表する予定です。実に発射から1ヶ月経過しての修正です。

 テポドン2は、「約400km」としていた飛距離を「沿岸から数十km」の北朝鮮近海に修正します。これは約10kmとするビック氏の推測から少し大きな数字です。しかし、「1段目の燃焼は約40秒で終わり、2段目は分離しなかった」という点は大きく異なります。発射後40秒では、テポドン2は発射台から1.2km、高度で4.3km程度しか離れていません。ここでエンジンが燃焼を止めた場合、数十kmも慣性で飛び続けるのかという疑問があります(ビック氏は2段目以上が空中分解し、1段目は最後まで燃焼を続けたとしています)。読売新聞によれば、1段目が40秒後に燃焼を停止したのは、米軍の早期警戒衛星の赤外線探知で確認されているということですから、エンジンに問題があった可能性は完全に否定できません。テポドン2の目標地点については、正常な打ち上げでないために「太平洋側に向けた可能性が高い」とするだけにとどめます。これは「アラスカに向かった可能性もあった」という線を残せるので、恐怖感を長続きさせるためには都合がよいことでしょう。

 残りの6発は、2発が「ノドン」、4発が「スカッド」とし、「6発とも直径数十kmの範囲内に落下した」と公表する予定です。新型IRBM(潜水艦発射中距離ミサイルの改良型)含まれておらず、新型スカッドは「含まれていた可能性がある」と曖昧な表現にとどめるようです。一時、1発目と2発目が、かなり離れた場所に着弾したという政府書面が日本テレビの「きょうの出来事」で報道されましたが、それとは異なる内容とみられます。しかし、私の記憶では、自民党の平沢勝枝氏が、この番組の放送の前かどうかは不明ですが、早い段階で、すべてのミサイルはほとんど同じ場所に着弾していると別のテレビ番組中で発言しています。その段階で、与党には正確な情報が流れていたのは間違いありません。先日の解析が難航しているという報道は、政府筋の言い訳を真に受けた記者が書いたものにすぎません。時間がかかったのは、日米間でデータのすり合わせを行うためだとしか思えません。それに、ノドンとスカッドがまとめて直径数十kmの範囲に落下したのなら、従来言われていたCEPよりもかなり悪い成績です。正確な落下地点はどうせ公表されないでしょうが、ノドンが足を引っ張った可能性が高いと思われます。これでどうして新型ミサイルの話が出たのか理解できません。

 打ち上げ順序については、手の内を明かすのは得策ではないことを理由に、日米情報当局は公表しない方針とのことです。いまさら隠しても意味はなく、これは意味不明です。むしろ、解析結果に自信がないのかと疑ってしまいます。日米のイージス艦が探知に成功したのは、2、4、5、7発目だけという共同通信の報道もあります。なぜ、こうも秘密めかすのかと言えば、ミサイル追跡は必要な装備を持つ軍にしかできず、情報を独占することは組織の威信を高めるのです。「民は寄らしむベし、知らしむべからず」の構造が、この分野にも存在しています。

 この件は両政府の発表を待って、また検討したいと思います。

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