米軍戦死者が物語る武装勢力の動向

2006.7.25

 国連イラク支援団(UNAMI)の集計によると、5月と6月の2カ月間のイラク人の死者が計5,818人にのぼりました。宗派対立の激化が原因と考えられています。今年の米軍の戦死者は下のように、4月に最高になり、その後は徐々に減っています(globalsecurity調べ)。これは武装勢力の狙いが米軍からイラク人へと変化したことを示しており、これまでも何度も繰り返されてきました。米軍の戦死者が減る時、イラク人の死者数が増えるという法則がみられるのです。そこで、iCasualties.orgのデータを使ってグラフを作ってみたところ、実に分かりやすい結果が得られました。

 グラフの右軸がイラク人の民間人の死傷者、左軸が米軍の戦死者数です。今年について言えば、米軍は80名を超えることはありませんが、イラク人は毎月600人以上死んでいます。ちなみに、グラフに含まれていないイラク軍人の戦死者数は100人から200人の間というところです。米軍の戦死者数が少ない3月と7月にイラク人の戦死者数が増えていることが分かります。5月だけは例外で、どちらの数字も高い値を示しました。

 なお、今年上半期の死者は14,338人。住民の国外脱出が続出しており、宗派対立が原因とみられる難民・避難民は16万人近いといいます。最初からアメリカのイラク政策は見込みのないものでした。これが中東全体の混乱に結びつく危険が心配されるのですが、それを心配している政府はありません。戦争の火種はいつしか大きくなって消せなくなるものですが、誰もそれを懸念していないのが問題なのです。

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