「テポドン2=巡航ミサイル説」について

2006.7.17

 また、一覧表が更新されました。また、ちょっと気になる部分があり、その指摘も加えてもらいました。内容が微妙に変わっているので、色で変更部分を示しました。

15日更新の一覧表
順番 発射時刻 飛翔距離
(km)
ミサイル
1
3:30 - 3:32- 3:33 500 スカッドC
2
4:00-4:04 600+ ノドンA
X
4:59 ? 550? スカッド又はTD-2
4
5:00- 5:01 1.8 -5 テポドン2(TD-2A,、TD-2B、 TD-2C)
5
7:10-7:12 550 スカッドC
6
8:20 AM 600 スカッドC、ノドンA?
7
17:20 PM 600 スカッドC、ノドンA?
8
不特定 不特定 不特定
9
不特定 不特定 不特定
10
不特定 不特定 不特定
※は「正確性に疑問の余地があるデータ」
TD-2はテポドン2の初期型のこと。テポドン2の型式は、TD-2A,、TD-2B、 TD-2Cの3種があり、2Cはテポドン3と呼ばれることもあります。


 その後、ビック氏とのメールのやり取りの中で、すべて公開情報を使って分析していることが分かりました。10分単位での打ち上げ時刻しか知らされていない日本人としては、分単位の打ち上げ時刻をどうやって知ったのかが気になります。それにしても、公開情報だけでこれだけ分析するのは驚きです。てっきり、軍当局の情報をもらっているものと考えていました。こうなると、MDの精度については、globalsecurityの情報からは断言できないことになり、振り出しに戻った気分です。

 昨日、あるテレビ番組で、テポドン2は発射後42秒で水平飛行に入ったと主張しているロケットの専門家がいました。テポドン2の1段目は中国のロケット「長征」が基盤となっており、発射後42秒で4つある噴射口の2つを止め、それによって水平飛行を始めるように設計されていたというのです。さらに、テポドン2は巡航ミサイルであり、敵地に配置された発信器の電波を受信して、正確に目標に命中するという話も紹介されました。

 まず、テポドン1の1段目の設計は中国の技術が使われているということは、すでに知られていました。ここまでは常識的に考えられる話です。しかし、これ以外の話には技術的な裏打ちがありません。まず、打ち上げの直後に噴射口の半分を止めることは考えにくい話です。この段階では速度を稼ぐのが第一の要件で、それを妨げるようなことはやらないと考えられるからです。

 次に、テポドン2は打ち上げの段階で全長が35.8mといわれ、1段目をつけたままだと水平飛行をするには長すぎないかという問題があります。それから、テポドン2は弾道ミサイルであって、巡航ミサイルではありません。巡航ミサイルはマッハ0.75程度で飛行し、そのために低空を地形に沿って飛ぶことができます。ミサイルといっても、ロケットは打ち上げの段階でだけ使われ、それ以降は、翼を出して、ジェットエンジンに切り替えて飛行します。つまり、燃料を燃焼するために空気を利用するのです。このため、巡航ミサイルは効率よく1,600km程度を飛行できるのです。それに比べると、ロケットは燃焼に関する材料をすべて自前で持っており、構造がまったく違います。ロケットは速度が巡航ミサイルよりも10〜20倍以上早く、そのために宇宙空間を飛行することで飛行距離を稼ぐのです。解説したロケットの専門家はなぜこういう基本的なことを誤ったのかが分かりません。そもそも、ロシア、中国、イランの技術のつぎはぎみたいなミサイルしか作れない北朝鮮が突然巡航ミサイルを完成させたとは考えにくい話です。

 さらに、ミサイルを導くために発信器を仕掛ける話は以前からマスコミで報じられていました。情報源は元北朝鮮の工作員です。こうした訓練を北朝鮮が行っていたとしても不思議ではありません。実際に、荷物を外国に持ち込み、指定した場所に置かせるのは、一般的な工作員の訓練でよく行われていることです。この時、工作員にミサイルを誘導するための発信器だという説明がされてもおかしくありません。工作員にもそれが本物の発信器かただの箱かは分からないのです。注意すべきなのは、北朝鮮にそのようなシステムを開発する技術があるかどうかということです。とても無理としか思えません。

 ある週刊誌は、種類の異なるミサイルを同時発射することで韓国、日本、アメリカを同時に攻撃する訓練だったっとも書かれていました。しかし、打ち上げに時間がかかるテポドンでは、アメリカを攻撃しようがありません。その時が来たら、ペリー元国務長官が言ったように、アメリカはテポドンを巡航ミサイルで破壊してしまうでしょう。それにあんなに間隔を置いたのでは、同時発射になりません。韓国の軍情報部が、今回のミサイル発射の理由を突き止めてくれるまで、恐らく真相は闇の中でしょう。

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