解析詳細がテポドン2の欠陥を物語る

2006.7.11

 globalsecurityの記事が更新されました。一覧表にあるテポドン2の飛行距離は、クェスチョンマークが付記されながらも、1.4kmから499kmへと大幅に変化していました。解析結果に大きな変化があったように思われましたが、記事中には韓国が主張する7分間飛行説と同様、499km飛行したことは恐らく正確ではないと書いてあり、大筋に変化はありませんでした。米国防総省筋は、韓国が他のミサイルとテポドンを混同していると指摘しています。一覧表には報告された情報は全部書き込んでいるようで、それならば額賀防衛庁長官が言うスカッドERも一覧表に書き込まれるはずですが、未だにスカッドCのままです。この相違は説明のつけようがありません。

 墜落に関する新しい情報があります。脱落した弾頭の外殻は二つ(two-piece)に分かれて外れたようです。この外殻はイラン製の「アイリス」の派生だとみられています。液体燃料式のICBMの多くが直径3mであるのに比べて、テポドン2は直径2mと細い設計となっており、これは中国の設計技術に基づいています。米情報筋によれば、この全長と直径の比がコントロールの失敗につながった可能性があるとのことです。今回発射されたテポドン2は2Bか2C/3のいずれかと判定されました。

 今回、偵察の詳細が明らかになりました。まず、遠方からの偵察方法として、3機から6機のU-2偵察機、KH-12写真偵察衛星、日本の偵察衛星、及び人的諜報活動(HUMINT)などが活用されました。私は、HUMINTは主に韓国軍情報部が行ったと想像します。近距離における偵察としては、米艦船に搭載されるRC-135レーダー、RC-135S・コブラボール、海上自衛隊のイージス艦2隻が日本海とその他の海域に配置され、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦2隻と複数の観測船が舞水端里発射施設の近くに配置されました。これだけ集めて観測に失敗するわけはなく、一部の人が主張したように、アメリカが発射の瞬間を捕らえられなかったということは考えられません。現に、米軍はごく小さな部品の脱落までも解析しています。さらに、米海軍は多数の艦艇(イージス艦、ミサイル巡洋艦、空母)をこの地域に集結させる予定です。ただし、空母は最近小樽に寄港したキティ・ホークではなく、ペルシャ湾からエンタープライズを呼び戻すということです。

 今回明らかになった情報を見ると、北朝鮮のロケット技術に若干の失望を覚えます。要するに、イランや中国のデザインの使い回しである印象が拭えません。先日のインドのICBM発射テストは失敗したものの、打ち上げそのものには成功しました。1段目は液体燃料、2段目は固体燃料ということですから、その独自開発に成功しているようです。2段目の切り離しに失敗したという情報があり、これならば改良は容易だと考えられます。北朝鮮のミサイルは、実体的にはソ連からもたらされたスカッドC辺りの技術の使い回しで新型ミサイルを作り出してきた経緯があり、今回新開発らしいエンジンの失敗で、その技術力は低く評価するしかなくなりました。また、2mという直径が問題ならば、1段目を最初から設計し直す必要があります。ここから考えると、2基目のテポドン2を発射しても成功する可能性はほとんどないことになります。

 テポドンの軌道を「google earth」で再現してみたところ、北朝鮮の地上に被害が出ている可能性を考えざるを得なくなりました。「google earth」は衛星写真を地球の地形データにレンダリングし、好きな方向から三次元映像として見ることができます。テポドンは発射台から離れてから海上に出るまで、5km程度陸上の上を飛びます。普通、どこの国もロケット発射基地はこういう立地に造らないものだと思います。「google earth」を入手するには、サイトにアクセスして無料版をダウンロードします(機能が豊富な有料版も入手できます)。「google earth」を起動して、地球を回し、「北緯40度51分17秒 東経 129度39分58秒」にある舞水端里発射施設を探します。高度を下げると発射施設が見えてくるので、発射台が画面中央に来るように調整します。緯度経度を表示して、経度線がまっすぐに見えるようにすると、発射台から真東を見た映像になります。そのまままっすぐ東へ進みます。すると、下北半島の真ん中辺りを通り、ハワイ南西海上へ到達することが分かります。

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