自衛官国際法小六法
 この本は以前に、別の本と一緒に紹介していますが、単品としても紹介しておきます。

 この本には、自衛官にとって関わりが深く、法務関係の職のためにも不可欠の国際法と国内法が掲載されています。自衛官の学習や教育、訓練に使えるだけでなく、一般人にとっても国民保護法や国民保護計画を考える上でも必要です。国民保護法の制定にあたって、日本がジュネーヴ条約追加議定書を批准したように、自国内だからといってすべて自分の判断で行動できるわけではなく、戦争に関する国際法を守る必要があります。捕虜が生じた場合の処置、海外からの救援団体の受け入れなど、何も知らないと赤恥をかいてしまう事柄が多々あるのです。

 日露戦争の折、日本が国際法をよく守り、ロシア軍の捕虜を適切に扱ったことは国際的な評価を受けました。しかし、太平洋戦争ではこのルールを尊重せず、捕虜を虐待したり、非合法的に処刑する事例が目立ち、敗戦後、連合軍によってこうした非合法行為を行った指揮官が処刑される事例が少なくありませんでした。また、指揮官の責任ではなかった不法行為が指揮官の責任とされた事例もあります。

 また、日米安保条約は、防衛関係の国内法や規則の基本となる法律でもあるので、読んでおくことは有益です。メディア上の防衛議論で、自衛隊法など基本的な法律が無視されて暴論が展開され、その影響を受けてしまうといった問題も、法律を読んでおくことで防げます。

 この本には、以下の法律、条約が載っています。ジュネーヴ条約(1949年8月12日)、ジュネーヴ条約追加議定書、戦闘手段に関する条約(ヘーグ条約など)、武器などの使用・制限に関する条約(対人地雷禁止条約など)、中立などに関する条約(開戦ニ関スル条約など)、国際組織に関する条約(国際連合憲章など)、日米安全保障条約、自衛隊の任務、行動、権限、国際貢献(武力攻撃事態等対処法など)、条約の国内法的措置(対人地雷製造等禁止法など)。

 この一冊があれば、軍事問題に関する条約はほとんど全部読めます。また、使いやすいのも特長です。版が小さく、机の上に置いておけるところ。国際条約には日本語が左のページ、英語が右のページに対照して掲載されていること。疑問が湧いたら、さっと引けるのがよいところです。緑色のビニール表紙で耐久性もあるところも素敵です。

 時折、版が改訂されるので、購入する際は必ず確認してください。この書評を書いた時点では平成18年度版が最新刊です。私は現在、平成16年度版を持っていますが、日本がジュネーヴ条約追加議定書へ参加したため、平成18年度版では内容が変更になっているはずです。この書評も平成16年度版に基づいています。(2007.1.10)

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