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日 付:2009.1.28


スパイクさん、こんにちは。
どろです。

ガザ侵攻とイスラエルの宗教的背景を興味深く読みました。
イスラエルは戦争に宗教な的動機付けをしたいのでしょうか。
このテーマで何日か前にに書いたものがあるので、参考になればと思い送らせていただきます。

中東の戦争の理由 なぜウソがまかり通るのか 2009年01月22日13:31

アラブとイスラエルの宗教対立は本当か

以下のすべては真っ赤なウソ、デタラメです。

●アラブとイスラエルの戦いは聖書時代にさかのぼる根の深い対立だ。
●ユダヤ人は2000年間、故郷に帰るのを夢見ていた。
●「シオン議定書」に明らかだがイスラエル民族は世界支配をたくらんでいる。

敵も味方も第三者もマンガのようなデタラメに振り回され、その結果数え切れない悲劇が起きている。
なんなのでしょうか、これは。
以下、私が本当はこうだろうと思っていることを書いて、皆さんの感想を求めたいと思います。

●「シオン議定書」は存在しない

「シオン議定書」なんて普通の人は知らないので説明を。
「シオン議定書」とは1897年にスイスのバーゼルで開かれた第一回シオニスト会議で、ユダヤ人の秘密結社ブネイ・ブリスのメンバーであるアッシャー・キンズバークが発表した24項目の秘密決議文のことで、うっかり外部世界に流出したのだとか。
そこには「世界征服計画」なるものが書いてあったそうです。
ヒトラーもこれをユダヤ人弾圧の理由に使いました。
しかしこれは全くのデタラメであることが分かっています。
ユダヤ人を迫害していた帝政ロシアの秘密警察がねつ造したものです。
ハマスらイスラム原理主義者はいまだに「シオン議定書」を信じていて、イスラエルとの戦いを正当づけるために彼らの綱領文書に載せているそうです。
世界征服をめざすイスラエルとの戦いは非和解だと強調するためですね。

●聖書のパレスチナ人は現代パレスチナ人ではない

パレスチナ人は旧約聖書にペリシテ人として登場しており、ユダヤ民族と対立・抗争を繰り返していたと言います。
旧約聖書によれば、有名なサムソンが捕らえられたのはパレスチナの「ガザ」の町でした。
ユダ王国のヒゼキア王が「ガザ」を攻め落としたという記述もあります。
しかしイスラエル人とパレスチナ人が古代から戦争していたというのはデタラメです。
聖書に出てくるペリシテ人がパレスチナ人だというのは間違いなんです。
アラブ系の現代パレスチナ人は、聖書時代にパレスチナに住んでいませんでした。

今日の研究では、ここらあたりはつぎのようになっています。
すなわちペリシテ人とはギリシャ系民族であり、ミケーネ文明が衰退してからパレスチナに移住したもので、その後土着のカナン人に同化し、民族としては消滅しました。
カナン人とは後のフェニキア人のことです。

●現代ユダヤ人は古代ユダヤ人を殺している

国がローマに滅ぼされる以前、ユダヤ人はすでに周辺のアラブと文化的な一体化が進んでいました。
(ナザレのイエスもヘブル語ではなくアラブ人の使うアラム語を話しています。)

古代イスラエルが滅亡すると、彼らのほとんどはすぐに周辺アラブ世界に同化してしまい、後にイスラムに改宗しました。
ですから強いて言うならいまイスラエル政府が弾圧しているアラブ人こそが古代ユダヤの民の遺伝子を受け継いでいるのです。
一部に同化しなかった人もいるそうですが、彼らはアラブ人と共存していました。


●古代ユダヤ人と現代アシュケナージ・ユダヤ人は無関係

ローマ時代に迫害をこうむって本国から出て行った人たちは、今日のスファラディ・ユダヤ人だと言われています。
スファラディ・ユダヤ人は現代イスラエル国家の少数派で、労働者階級です。
今日イスラエルを支配しているのはアシュケナージ・ユダヤです。
じつはアシュケナージは古代イスラエルとまったく無関係なのです。
彼らはハザール民族であり、血縁的にユダヤ人と何の関係もありません。
ハザールは今から1500年以上前から黒海の北にいた民族です。
これは後で説明します。
ともかくユダヤとアラブの長い対立というのは、シオニストが戦争し支配するために聖書を利用してでっち上げた幻です。
聖書に登場する民族は今日ではすっかり入れ替わっていて、もうパレスチナに住んでいないのです。

●陰謀論に気をつけよう

アラブとイスラエルの対立は、初めから終わりまでウソとデタラメ、歴史的誤謬に彩られ、煽られているのです。
こういうデタラメがまことしやかに通用している原因は何でしょう。
私は不信感だと思います。
よそ者嫌い、外国人嫌いは世界共通の現象です。
わけのわからない奴らだ、何を考えているかわかったものではないという恐怖感が、根拠のない言説に説得力を与えるのです。
フリーメーソン、イルミナティ、ロスチャイルドなどの世界征服系陰謀論。
アポロ月着陸でっち上げ論、宇宙人誘拐説などの妄想系陰謀論。
これは他人事ではありません。
ネット世界に溢れる中国陰謀論はひどいものです。
先日の国籍法騒ぎも、根っこはここにあります。
南京事件まぼろし説なども陰謀論の一種です。

よそ者嫌いは私たちの根底に強く巣くっていますから、なかなか克服が困難です。

しかしそれを克服しないと世界はいつまでたっても平和になりません。
世界の動きが複雑でよくわからないとき、陰謀論は便利です。
一度陰謀論を受け入れる下地ができてしまうと、ある事件は、じつは裏でこんな陰謀があったんだと説明されるとすごくわかりやすくなり、証拠は何もないけど話のつじつまがあっているように見えるので信じてしまうのです。
客観的に、冷静にものごとを見る態度をいつでも養いたいものだと思います。

●なぜハザール人がユダヤ人になったのか
奇妙なハザールの歴史

ハザール人はもともとフン族(匈奴)の支配下にあり、戦いに堪能な「戦士民族」とされていました。
その後はコーカサス北諸族最強の民族として西トルコ帝国(西突厥)に服し、帝国最強の実戦部隊として活躍しました。
帝国が滅ぶとハザール人は自らを「西突厥」の継承者と名乗り、ハザール汗国を建てます。
ハザール汗国はハザール王国ともいいます。
その支配地域は黒海北部にあり、今日の東ヨーロッパ全土に影響を及ぼしていました。
9世紀はじめ、ビザンチン帝国とアラブ諸国の圧迫を受けたハザール王オバデアは対抗的にユダヤ教に改宗しました。
そのいきさつは分かりませんが、アブラハムの神はキリスト教とイスラム教がともに崇める神ですから、二つの上位に位置する宗教だという考え方をしたのでしょうか。
そしてこれ以後、かれらは自らをジューイッシュと称しはじめます。
ジューイッシュとはユダヤ教徒を意味しますが、同時にユダヤ人という意味もあります。
ユダヤ教は民族宗教なのでだれでも信仰できるものではないはずなのですが、旧約聖書の記述を利用してハザール人もアブラハムの子孫だということにしたのでしょう。

ハザール汗国は後にキプチャク汗国に滅ぼされます。13世紀のことです。
その後、ハザール人の記録は歴史から消え去り、彼らが勢力を張っていた地域でユダヤ人迫害が始まるのです。
つまり今日ユダヤ人と言われている人々は、滅亡したハザール王国の難民だったのであり、誇り高い戦闘民族として周辺民族に過酷な支配を敷いていたので、その反発から迫害を受け始めたのでしょう。
ジューイッシュ(ユダヤ教徒)に対する迫害が、いつしかジューイッシュ(ユダヤ人)に対する迫害と同一視され、ハザール人自身もいつの間にか自分をユダヤ人だと考えるようになっていったのです。

 作戦名は、ガザ侵攻をユダヤ人の勝利と誇りを思い出させる戦いに関連づけて、国民の士気を鼓舞するところに目的があったのかも知れません。その割には中途半端な戦いになってしまったのが疑問です。

 陰謀論は冒険小説のネタとしては面白く、世界征服を狙う悪者と秘密諜報員との戦いを描いた小説は不滅の人気を誇っています。でも、こういう話を本気されると困ってしまいます。時として、それが世間の常識になってしまうこともあります。


 「月の石」の話を聞いたことがあります。アポロ計画によって地球に運ばれた月の石は、各国に貸し出されたものの、分析することは許されていなかったという話です。貸し出しの際、絶対に分析しないという誓約書にサインさせられ、それを破った者には、凄まじい罰が与えられるという話でした。それは人類が月に行っていない証拠で、月の石と称しているのは地球の石で、ばれるのを防ぐために分析が許されていないのだと言うわけです。この話を私にした人は、反オカルトで有名な科学者から直接聞いたのだと私に断言しました。その科学者はオカルトを否定していますが、月着陸に関しては疑問があると主張しています。しかし、石を貸し出せば、こっそり分析される危険は常にあるわけで、それが嫌なら貸し出さないのが一番です。第一、他の国が月面着陸に成功して、本物の月の石を持ち帰ったら、嘘がばれてしまうかも知れません。「凄まじい罰」というのも意味不明です。暗殺を意味するのなら、NASAが海外で関係者を殺害することになってしまいます。これらの疑問を当人にぶつけたら、「そう言われると、俺には分からないよ」という答えでした。(スパイク)
投稿者:
日 付:2009.1.20


スパイクさん、ご無沙汰しております。
転職などでこのところ投稿しておりませんが、毎日読ませていただいています。
ご著書も買いましたよ!

さて今日は二つのことについてのメールです。
長いメールになりますが、お許し下さい。

1.白燐弾について

グローバル・セキュリティの記事は大変参考になります。
でもグローバル・セキュリティの研究者は「着衣が燃えていない死体」は白燐弾によるものではないとザ・インディペンデント紙に答えているんですよね。
http://www.independent.co.uk/news/world/americas/the-fog-of-war-white-phosphorus-fallujah-and-some-burning-questions-515345.html

一般的な危険性は認めるけれど、戦場の実際の被害は認めない−まあこれが米軍から情報を受け取っているシンクタンクの限界かも知れませんね。

2.ハマスについて
平和を訴える人はイスラエル憎しのあまり、ハマスを支持する傾向にあるようです。
しかしハマスはそんなに立派な存在なのか、とても疑問なのです。
以下はmixiに書いた自分の日記です。
ちょっと内容が陰謀論くさくなってしまって反省しているので、ハマスをどう見ればいいのかご意見をお聞かせ下さいませんでしょうか。

☆「ハマスはパレスチナ民衆の味方なのか」 2009年01月20日12:52

●ハマスもまた抑圧者ではないのだろうか

イスラエルはひどいけれどハマスも馬鹿だと言うのは「どっちもどっち」論だというので、パレスチナ難民を支援する人々に評判が悪い。
イスラエルが一方的に悪いのであって、ハマスのことを悪くいうのはイスラエルの犯罪を免罪する相対的効果があるというのは、分からない意見ではありません。

でもイスラエルが悪いからそれと対抗している側が百%正しいと決めつけるのは如何なものかという疑念もまたぬぐい去れません。
ハマスもまたガザの暴力的支配者ではないのかなあ。
だってガザにいたファタハ支持者はハマスの内部テロで酷い目に遭わされたんだから。

●ハマスは平和を望んでいるのだろうか

あるマイミクさんの日記に、ハマスが考え方を改めなければイスラエルと共存できないんではないかとコメントしたら、以下の意見が示されました。

>ハマースが、イスラエルと共存を拒否していた、といのはうそだと思います。
共存を願って、完全に「停戦」を守っていた幹部をイスラエルは暗殺しました。
こうやって和平の動きが出てくると、イスラエルは暗殺したり、空爆をしたり。
「どっちもどっち」では、絶対ありません。
>ハマスはイスラエルとの停戦に合意し、攻撃を 止めている真っ最中でした。

暗殺された幹部というのはハマス政治部門のトップだったアブ・シャナブのことです。
示された情報は誤りだと思いますが、そこの日記はイスラエルの蛮行を繰り返させないために何ができるのかを語り合う所であって、ハマスについて語り合う所ではありません。
これ以上語ると迷惑がかかります。
そこで自分の日記に書くことにしました。

●停戦を守っていなかったハマスとイスラエル

先の情報は映画NAKBAの製作にもかかわった森沢典子さんから寄せられたものだそうです。
現地の事情に詳しくて暗殺された幹部にインタビューしたこともある人だそうですが、それにしてはちょっと首をかしげる記述があります。

>シャナブさんは2006年夏、乗っていた車に対する戦闘機からのピンポイント空爆で爆殺されてしまいました。

アブ・シャナブが殺されたのは2006年ではなく、森沢さんが彼と話したという2003年です。
彼はハマスの中では珍しくイスラエルとの共存を主張していたそうですから、殺されるべき人ではなかったのですが、2003年8月21日、暗殺されました。

もう一つ、首をかしげる記述があります。
彼が暗殺される前、ハマスは停戦を守っていたと森沢さんは書いています。
実際はどうだったのでしょうか。

2003年8月
12日、ハマスの自爆攻撃2件。ハマスは、停戦は継続するとの声明を発表。
14日、イスラエル軍、ハマス軍事部門のリーダーであるムハンマド・セーデルを殺害。
19日、エルサレムのバスで報復の自爆攻撃。男性・女性・子供の計20人を殺害。
19日、ハマス軍事部門の幹部は一斉に地下に潜伏。
20日、ファタハ自治政府が緊急会議でハマスなどの武装組織解体を協議。
21日、イスラエル軍、アブ・シャナブを暗殺。

●なぜ和平派アブ・シャナブが殺されたのか
或いはなぜ武闘派幹部は生き残ったのか

イスラエルのジャーナリストはこう語ります。

「暗殺に対し、イスラエル側は・・・いっさいの責任をなすりつけるのが通例だが、このアブ・シャナブの場合は、それもできなかった。アブ・シャナブは政治部門のリーダーとして知られた存在だった。そんな彼がなぜ暗殺の対象に選ばれたのか? イスラエルTVの軍担当記者が口をすべらせた──アブ・シャナブが殺されたのは「簡単だった」からだ、と。要するに、エルサレムのバス爆破事件後、軍事部門のリーダーたちは地下に潜伏したのだが、アブ・シャナブは通常の活動を続けており、したがって、実に簡単に殺せるターゲットだったということだ。」

http://www.onweb.to/palestine/siryo/avnery823.html

武闘派は隠れていて無事だった。
しかし和平派アブ・シャナブには、隠れよという支持が下されておらず、そしてイスラエルは彼の所在を突き止めており、殺された。
ハマスは和平派幹部がいなくなったので、これ幸いと停戦を破棄した。
すると待ってましたとばかりにイスラエルはガザ攻撃を開始した。
ファタハが協議していた「ハマス解体」はうやむやになった。
和平派アブ・シャナブ暗殺によって、ハマスとイスラエル、お互いがやりたいようにやれることになったわけですね。
・・・出来レースではないかと疑ってしまうような連携プレーですが・・・

●ハマスはイスラエルとつながっている?

この疑い、信憑性はともかくとして根拠となる情報があります。
同じ日記に寄せられたコメントで知ったのですが、ハマスとイスラエル諜報機関がつながっているという情報もあるのです。

ロンドンのアルハヤト紙の政治部主幹ザキ・シェハードが、調査の結果そう唱えているのです。
調べるとシェハード氏は国連難民キャンプ育ちのパレスチナ人だそうです。
著書『ハマスの内幕 戦闘的イスラム主義運動の知られざる事実』は日本語訳が出ていないようですが、英語版アマゾンに要約が載っており、興味深い記述がありました。

〉ハマスはイスラエルの暗黙の奨励を得て台頭した。
〉最初の武器を購入する現金を、ファタハ運動の弱体化を望んでいたシンベット
(イスラエル国家安全保障局)から得た。
http://www.amazon.com/Inside-Hamas-Militant-Islamic-Movement/dp/156025968X


●ガザ侵攻の不思議な結末

私は今回のガザ侵攻の結末に不審を抱いています。
死者は1200人でその半数以上が一般市民です。
するとハマスの被害は500人程度。負傷者がその5倍として2500人程度。
あわせてハマスは3000人の被害を受けたことになります。
ハマスのメンバーは20,000と言われていましたので、6〜7分1の被害しか受けていません。
どうしてその段階でイスラエルは攻撃を止めたのでしょう。
なぜ本格決戦の前にハマスは停戦を受け入れたのでしょう。

この結末は一切の過程で蚊帳の外に置かれたファタハの権威を低下させます。
勝てない戦争を挑発しながらろくに戦わなかったハマスに対する反発もあるでしょうが、それを弾圧するのに充分な力をハマスは温存できました。
これはハマス指導部とイスラエルの出来レースなのでしょうか。
こんな陰謀論は信じたくありませんが、ハマスが主観的にどう考えていたとしても、イスラエルの手のひらで踊らされている可能性は捨てきれません。

●最終勝利者は

けれどイスラエル政府がどんな絵を描こうとも、他民族を力で永続的に支配することはできないでしょう。
今回の攻撃が中東に於けるイスラエル支配の崩壊を早めた − これだけは間違いない。
私はそう思います。
最終勝利者はイスラエル政府やハマスでなく、イスラエルとパレスチナの市民であるべきです。
そのために自分に何ができるのか、私はそれを考えねばなりません。

(↓前日の日記です)
☆「不安定な停戦にあたり、ガザの戦争を考える」 2009年01月19日10:34

ガザで停戦が成立しましたが、市民の苦境は続きます。
イスラエル非難をこれからも続けなければならないでしょう。

この戦争がどういうものであったかを考えるために、戦争にいたるまでの状況を見てみましょう。
ガザにイスラエルの入植地があった一昨年の様子はこうでした。

http://palestine-heiwa.org/feature/about_gaza/

●0.6%のイスラエル人が40%の土地を占有

・ガザ地区には 140万人以上の人が暮らす。
・そのうち難民は100万人以上。(2006年UNRWA調べ)
・ガザの面積の40%以上が国際法的には違法な(イスラエル的には合法な)ユダヤ人入植地となっている。
・入植者数は 約6000人(そのうち、実際に日常生活を入植地で行っているのが何人かは不明。住民登録だけして実際にはそこで暮らしていない入植者もいるらしい)。
・つまり、人口比において0.5%ほどを占めるに過ぎないイスラエル人6000人が40%を占有し、その残りで140万人がひしめきあって暮らしている。
・水や電気などのライフ・ラインは、全てイスラエルのコントロール下にある。
・よって、ガザに流れている水を、パレスチナ人はイスラエルから買わなくてはならない。
・圧倒的少数のイスラエル人入植者が水資源のほとんどを独占している。
・パレスチナ人が利用できる水の量は悲劇的に制限されている。
・ガザの失業率は、70〜80%。
・1日1ドルの貧困ライン以下で生活する家庭の割合は85%近く。
・多くの子どもたちに栄養失調による中〜重度の貧血症状が見られる。
・ガザの周囲は、壁によって完全に囲まれている。
・海は、イスラエル軍によって封鎖されている。
・パレスチナとエジプトの国境を管理しているのもイスラエル。

●侵略者イスラエルと抵抗者パレスチナ人

イスラエル人の入植地は無人の地ではありません。
パレスチナ人の住居を壊して追い出し、畑を奪ったのです。
しかし、イスラエルはパレスチナ人が抵抗するから仕方なく攻撃し、仕方なく家や農地や道路を破壊し、逮捕し、道路や国境を封鎖するのだという主張を繰り返すばかりでした。

これに対して果敢に抵抗したのがハマスでした。
イスラエルが入植地を撤去したとき、ハマスはイスラエルの「譲歩」を勝ち取ったかに見えました。
けれどイスラエルは経済的なメリットが少ないのに、治安コストが膨大にかかるガザの入植・占領をやめるたにすぎません。
「撤去」したけれど、土地はパレスチナ人に返されていません。
イスラエルは言います。
「撤去に合意したが、返還に合意したわけではない。」
なんという厚かましく不誠実な言い分でしょうか。
イスラエル政府と真実の話し合いなど不可能だとハマスが言うのももっともです。

相変わらずイスラエルによる封鎖は続き、ガザの苦境が続いていましたが、イスラエルは言います。
「ガザは占領地でなくなったから保護の必要がない。」
これはつまりガザの水攻め・兵糧攻めです。
ここまでされて、世界のどの民族が座して死を待つでしょうか。

●ハマスの方法は間違っていないか

パレスチナ人には抵抗権があります。
ハマスは抵抗権を行使しただけとも言えます。
しかしへたな行使の仕方でした。
ハマスの敵はイスラエル政府であって、イスラエル市民ではありません。
ロケット弾攻撃をしてもイスラエル市民しか傷つかず、政府はちっとも困りません。
政府の過ちを正して民族が和解しなければならないのに、ハマスのやり口は政府に痛手を浴びせないで民族の憎悪をかきたてただけでした。
ガザの市民が求めているのは普通の暮らしでしょう。
それを手にするためにはイスラエルと戦わざるを得ません。
それをしてくれるのは、いまのところハマスしかいません。
そこで市民はハマスを支持します。

●ハマス幹部は無能で臆病なのか

しかしハマスの正体は救世主の出現を信じるカルト集団だそうです。
ハマス兵が命を惜しまず無茶な戦いに挑むのは、祖国防衛の心情とカルト理論のマインドコントロールの二面性があると思います。
けれど勇敢なのはメンバーだけで、ハマス幹部はただの臆病者だということが分かりました。
市民を守るためにハマス兵が爆弾を抱いてイスラエル兵に突進して撃ち殺されているとき、幹部はガザ市の地下に隠れて震えていただけでした。
幹部には戦いを組織する能力もないことが分かりました。
ハマスはガザの未来を託せるグループではないと思います。
けれどガザ市民がそこを支持する限り、それがいけないと言う権利を私たちは持ちません。
しかしハマスが居座る限り、イスラエルとの話し合いが先送りになるのも現実です。
ガザにジェームズ・タニス(次の日記に彼のことを書いています)はいないのでしょうか。

☆「戦争を止めた兵士の話 ブーゲンビル1997」 2009年01月17日17:00

未来バンクの田中優さんのメールマガジン(転送・転載可)から抜粋します。

「戦争を止めた兵士」のことが書かれています。
みなさま、ぜひご一読願います。


   ---------以下転載----------


□◆ 田中 優 より ◇■□■□◆◇◆◇■□■□


「タニス」


あまりにびっくりしたので、急にメルマガを出したいと思いました。
以下はぼくの岩波ブックレット、「戦争って環境問題と関係ないと思ってた」のあとがきです。このあと多少手直ししたから、本そのものの文とは違っていますが。

******

 最近、ブーゲンビル島で元ゲリラ兵士だったジェームス・タニスという名の友人ができた。彼はゲリラ兵士ではあったが、実はその戦いを終結させた人物でもある。誰も知らない無名の一人にすぎないのだが。

 ブーゲンビル島と言っても、戦時中の話に詳しい人以外では誰も知らないことだろう。ブーゲンビル島はオーストラリアの北、パプアニューギニアの東にある
人口30万人ほどの小さな島だ。地理的にはソロモン諸島に近く、文化的にもその一部にある。しかしソロモン諸島の一部になるべきブーゲンビル島には、不幸にもとても価値ある資源が眠っていた。鉱物だ。銅鉱山があるのだが、実際に掘られているのは金やダイヤモンドだと言われている。何よりそれらの鉱物は直接イギリスに送られてしまうから、調べようがないのだ。そして掘っている鉱山会社にとっては、価格の安い銅を掘っていることにしておいた方が都合がいい。

 この鉱山があるために、ブーゲンビル島はソロモン諸島にされず、パプア・ニューギニア(以下バブアと省略する)の支配下に置かれた。パプアは実質的にイギリスに支配された国であり、未だに英国連邦の一員である。イギリスの持つ世界一の鉱山会社「リオ・チント・ジンク」の子会社がこの鉱山を掘り、それがパプアの外貨の6割以上を稼ぎ、国家財政の2割を生み出していたのだ。

 しかしこの鉱山開発は極めて環境破壊的なものであった。水も土地も海も汚染され、ちょうど足尾銅山のような状況を呈していた。それに反対した地主たちは、鉱山会社に土地の返還を求めたが、支配するパプア軍はそれに対して徹底的な抑圧で応えた。度重なる人権侵害と抑圧の元、組織されたのが「BRA(ブーゲンビル革命軍)」というゲリラ組織だった。タニスが属していたのはその団体だ。

 ところが彼は、その戦いを続けながら疑問を持った。ブーゲンビル島にはわずか30万人の人口しかおらず、戦い合う兵士は互いに友人だったり、親戚だったりする。それなのに互いに1万人以上を殺してきた。「本当の敵は他にいるのではないか」と。
 部隊長だった彼は、兵士たちに「相手の軍の頭の上を狙え(つまり空砲のように相手を狙わない)」と命じた。そして彼らは敗走する時、たとえば建物の壁に「WE LOVE YOU」と書いた。敵の兵士たちも、なぜ殺そうとしないのかと疑問に思い始めた。
 次に彼は敵の兵士を見つけると、笑顔で手を振って、その後に走って逃げるという行動を取る。さらにはチラシを降らせて敵軍に不戦の意志を伝えていく。次第に殺し合わない状況が前線に生まれ(これは台湾と中国の間の、金門島周辺でも同じようなことが起きている)、互いに話ができる状況が生まれた。

 ついに話ができる場が生まれると、彼は敵軍の兵士たちにこう話した。

 「本当にオレたちは互いに敵なのか? 他に本当の敵がいるんじゃないのか」

 こうして次第に「前線」とは名ばかりの停戦状況が生まれてくる。互いに殺し合いのではなく、互いに認め合い始めたのだ。

 しかし、それによって鉱山開発が進められなくなったイギリスは怒った。英国連邦の一員であるパプアは97年、国防軍の訓練と革命軍壊滅を、英国の民間軍事請負会社であるサンドライン・インターナショナル(SI)社に依頼する。その契約には、紛争の元となった鉱山会社も同席している。しかしこれに反対したのがパプアの国防軍だった。彼らと住民の抗議によって、契約は中途で放り出され、SI社の社員(実際は傭兵だった)は監禁されて追い返された。これがきっかけとなってブーゲンビル島の内戦は終結。和解し自治政府が認められた。2015年には独立投票が行われる予定だという。

 しかしなぜ、パプアの国防軍がゲリラの壊滅作戦に反対したのだろうか。これは想像だが、タニスが作り出した状況がそうさせたのではないだろうか。敵同士ではない、人間同士のつながりが。

 ただの「敵」なら何人だって殺せるだろう。しかし親しい友人・知人だったら…。パプア政府は人懐こい笑顔のタニスを、停戦を生み出した友人であるタニスを殺そうというのだ。それを容認することは、自分を壊すことを意味したのではないか。タニスは武器を自分たちの上官に差し出し、「オレはもう女子どもを殺さない、殺すなら自分でやってくれ」と言ったという。相手の兵士にも自分の武器を差し出し、「オレをその銃で撃ち殺してもかまわない」と言ったという。

 「なぜそこまでできたのか」とタニスに訊くと、彼は「オレは平和のためなら死ぬのはかまわないが、戦争で死にたくなかったんだ。臆病だからね。だから一生懸命考えたんだよ」と答えた。 笑いながら話す彼の目からは、ずっと涙が溢れ出ていた。

 ぼくらはタニスのようになれるだろうか?


********

 以上のような原稿でした。そのタニスとパプアニューギニアのホテルで飲みながら話していたとき、一緒にいたのはマエキタミヤコさんだった。彼は突如、「パプアニューギニア政府と交渉したのは、このホテルの隣の部屋だったんだ」と言い、「実はこの国に入ったとき、ホテルまで尾行がついて航空券を盗まれた。今もオレはこの国ではテロリスト扱いだから。いつ殺されてもおかしくないんだ」と話した。

 「戦争以来、オレは夜ぐっすり寝られたことがないんだ。夜は急襲される時間帯だからね。朝までいつも起きてたんだ。だから今夜も眠れない」と言う彼を、マエキタさんと二人で部屋まで送っていき、部屋の中を隅々まで調べてから寝かせた。彼が少しでも恐怖感から逃れられたらいいと思って。その夜の眠りはぼくも浅いものになった。しかし何事もなく翌朝になり、タニスは寝坊して遅れて部屋を出てきた。

 「眠れたの?」と聞くと、「昨夜はぐっすりだったよ、珍しく」と、人懐っこい笑顔を見せながらタニスが言った。

 そのタニスが、なんとブーゲンビル自治政府新大統領になったそうだ!!!


ブーゲンビル自治政府新大統領にタニス氏
【メルボルン30日NNN=ベルマナ通信】

パプアニューギニアのブーゲンビル自治地区の大統領選でジェームス・タニスが当選した。

 記事はパプアニューギニアのポスト・クーリエ紙(2008/12/29) からの引用で、11月の補欠選挙でタニスが当選したという。1年半後には本選挙が実施される予定。2005年に自治政府が設立され、今後ブーゲンビル島の独立も含めて住民投票が行われることになっていると伝えている。(ベリタ通信編集部翻訳・編集) 

(2008年12月30日18時26分掲載、NNNデイリーダイジェスト)
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200812301826322

 お久しぶりです。

 とても面白いメールですが、内容が多岐にわたっており、どこから答えてよいのか戸惑ってしまいました。多分、全体に対して答えを書くと、話が拡散してしまいそうです。そこで、ハマスについては、彼らをどう見るかという点についてお答えします。

1.の「白リン弾」について

 グローバル・セキュリティのジョン・パイク氏は、ファルージャで民間人に対して米軍が白リン弾を用いたという情報は疑問だと答えたこともあります。ファルージャの戦闘が起きた頃に答えたもので、彼も現在は少し考えが変わっているはずです。その後、白リン弾による被害が明らかになり、やはり人口密集地での使用は民間人への被害を考えざるを得なくなったからです。

2.の「ハマス」について

 これは多くの人が迷うことだと思います。イスラエルとハマスのどちらが正しいかという問題ですが、これは往々にして迷路に迷い込みやすい問題です。

 そこで、国際法の分野では、戦争の種類(侵略戦争、自衛戦争など)を区別せず、戦争を行う者も一律に定義するという方法をとっています。そうしないと、延々と双方の言い分を聞くことになるからです。大抵の場合、どちらの言い分にも正当性はあるもので、そこに陥るとほとんど終わりのない議論に終始することになります。


 現在、内戦も戦争と認め、武装勢力なども戦争の当事者と認め、国際人道法を適用するようになっています。これは戦争を肯定するとは違い、法の枠の中で戦争を防止しようという、人類の英知の結集であるわけです。私も、それ以外に戦争を把握し、防いでいく方法はないと考えています。ハマスについても、こういう視点で、善悪は棚上げにして考えるようにしています。そうしないと、ハマスやパレスチナの抵抗の歴史をすべて掘り起こし、善悪を判断していかなければならなくなります。この作業はとてつもなく膨大で、歴史専門家向けの仕事となります。もちろん、その歴史を把握することは大事ですが、大まかな人たちを把握するだけでも大変で、軍事的な考察にはそぐわないと思うのです。(スパイク)

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