アンチ『Unbroken』本の虚構に反論する 第8回
角材を37分間も持ち上げられるのか

 

 ザンペリーニは渡邊から角材を頭の上に持ち上げる懲罰を受けました。丸谷はこの描写も非現実的だと指摘します。

『日本軍』30ページ

 また別の時には、渡辺伍長の命令で、一・八メートルもの重い角材を、炎天下の中で三七分間も頭上に持ち上げて支えた、とする記述もある。しかし、栄養失調と赤痢を患っていたとするボロボロの身体で、そんな大きくて重い角材を三七分間も頭上で支えるのは、超人的なら肉体を持つスーパーマンでなければ無理だ。(後略)

 相変わらず、ここでも渡邊の階級が伍長のままです。丸谷は37分間角材を持ち上げるのは不可能だと言います。しかし、彼の説明には状況分析がありません。ザンペリーニがやったことは具体的にどういう状態だったかを考えます。

 1.8mの角材はどれくらいの重さなのでしょうか。『Unbroken』には角材の長さしか書いてありませんが、『Devil』に具体的な記述があります。

『Devil』「If Goat Die, You Die!」

 He beat me, then dragged me outside and ordered me to stand at one end of the compound while holding a four-by-four-by-six-foot hardwood timber at arm's length over my head—and keep it there.
 彼は私を殴り、それから外へ引きずって、私に頭上に腕の長さで4インチ角6フィート長の堅木の木材を持ち、そこに保持して、建物の端に立つように命じた。

 角材の大きさは10.2cm角、1.8m長ということになります。木材は木の種類や乾燥の度合いによって重さが大きく異なります。木の種類は分かりませんが、作業用に使う木材なのでアカマツだと仮定します。その気乾比重は「0.53」です。計算式は「0.102×0.102×1.8×0.53」(木の長さはメートル単位)となり、答えは「0.009925416」(トン単位)で、約10kgだったということになります。これを長時間持ち上げるのは大変ですが、不可能な重さではありません。腕の長さで持ち上げたという記述から、腕の角度は45度くらいだったことが推定できます。

 角材を降ろした時のザンペリーニをウェードは次のように書いています。

『Prisoner』「Coalships」

 We went on working, glancing regularly at Zamperini and the clock. Finally Watanabe allowed the American to put down the beam. Louis could hardly move, hardly unlock his fingers. I looked at the clock. It had been 37 minutes. Thirty-seven minutes. I defy anyone to do it as long.
 我々は作業に行き、定期的にザンペリーニと時計を一瞥した。 最終的に渡邊はアメリカ人に梁を降ろすことを許可した。ルイはほとんど動けず、指を外すこことが難しかった。私は時計を見た。37分だった。37分間だ。 私はこれを同じく長く行う者を誰であれ許さない。

 ウェードはザンペリーニの名前を常にルイス(Louis)と書いています。元々、ザンペリーニの名前はルイ(Louie)でしたが、後に母親の名前「ルイス」に改名したようです。

 ここまでの考察で、ザンペリーニは約10kgの角材を、腕を約45度の角度で持ち上げ、37分間姿勢を維持したということです。指を外すのが難しかったという記述から、彼の指が痺れていたことが分かります。それだけ強く角材を握っていたのです。 恐らく、そうすることで手から腕、肩までの負担を分散し、最小限にしていたのでしょう。それが長時間角材を保持できた理由だと考えられます。それでも37分間という時間は脅威的です。

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